西国筋郡代

西国筋郡代とは

西国筋郡代（さいごくすじぐんだい）は、江戸時代に幕府が設置した地方行政官の一つで、九州地方の幕府直轄領（天領）を統治するために設けられました。西国郡代とも呼ばれます。江戸幕府は、全国に直轄領を設け、そこから年貢を徴収して財政を支えていました。その直轄領を管理するために代官や郡代を配置しました。西国筋郡代は、その中でも特に重要な役割を担っていました。

概要

西国筋郡代は、主に九州の幕府直轄領の民政を司る行政官として機能しました。その所轄は16万2千石にも及び、全国の天領の中でも2番目に大きい規模でした。代官所は、豊後国日田（現在の大分県日田市）に置かれました。日田は、九州各地への交通の要所であり、西国筋郡代の拠点として重要な役割を果たしました。

西国筋郡代が特に重要視された背景には、九州には有力な外様大名が多かったことが挙げられます。具体的には、島津氏、細川氏、鍋島氏、黒田氏といった大名家が、幕府の動向に影響を与えうる存在でした。そのため、幕府はこれらの大名の動向を監視し、必要に応じて対応する必要がありました。

西国筋郡代は、長崎奉行と連携しながら、九州諸藩の動向を監視するという重要な役割を担っていました。このため、「九州探題」とも呼ばれることもありました。探題とは、鎌倉幕府が地方を統括するために置いた役職であり、西国筋郡代の役割がそれに似ていることから、このように呼ばれたと考えられます。長崎奉行は、海外との貿易を統括する役職でしたが、九州の情勢にも目を光らせていました。西国筋郡代と長崎奉行は、互いに協力し、九州の安定を維持するために尽力しました。

役割

西国筋郡代の主な役割は以下の通りです。

民政: 所轄の天領の年貢徴収や、住民の生活に関する行政を担当しました。具体的には、土地の管理、税の徴収、訴訟の処理、治安維持などです。
諸藩の動向監視: 九州の諸大名の動向を監視し、謀反などの動きがないかをチェックしました。特に外様大名は、幕府にとって警戒すべき存在であり、常に監視の目を光らせていました。
長崎奉行との連携: 長崎奉行と連携し、九州全体の情報を共有し、問題が発生した際には協力して対応しました。

西国筋郡代は、通常の代官よりも格上の役職とされ、より大きな権限を与えられていました。これは、九州という地域が幕府にとって重要であり、その統治を任せるには、通常の代官では不十分だと考えられたためです。

西国筋郡代に関連する事項

鎮西探題: 鎌倉時代に九州を統括した役職で、西国筋郡代が「九州探題」と呼ばれることの由来になったと考えられます。
窪田鎮勝: 幕府最後の西国筋郡代を務めた人物で、蒲池鎮克とも名乗っています。
永山城: 西国筋郡代が拠点とした日田の城で、現在はその一部が残っています。
豆田町: 日田にある歴史的な町並みで、西国筋郡代が活躍した時代を偲ぶことができます。

参考文献

『徳川最後の西国代官』西澤隆治著 - ISBN 479470271X

外部リンク

* 高松陣屋御預所絵図 - 文化遺産オンライン

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