鎮西探題

鎮西探題とは

鎮西探題（ちんぜいたんだい）は、鎌倉時代に鎌倉幕府が九州地方を統括するために設置した機関です。行政、訴訟（裁判）、軍事など幅広い権限を持ち、九州における幕府の支配を支える重要な役割を担いました。

設置の経緯

元寇（蒙古襲来）後、鎌倉幕府は異国警固を最重要課題としました。弘安9年（1286年）には、九州の訴訟を博多で裁くための特殊裁判機関として鎮西談議所が設置され、4人の鎮西奉行が任命されました。

しかし、奉行たちの裁判に偏りがあるとの訴えが相次ぎ、幕府は調査を実施。その結果、正応4年（1291年）に六波羅探題から北条兼時と名越時家が派遣され、裁判権を分譲することとなりました。これが鎮西探題の始まりであり、九州の訴訟処理と異国防禦を主な任務としました。

鎮西探題の変遷

『佐賀市史』によると、鎌倉時代初期には天野遠景が鎮西奉行となり、その後、中原親能や武藤資頼が就任しました。武藤資頼は、大宰少弐と鎮西奉行を子に継承させ、以後、世襲しました。しかし、鎮西探題が設置されると、肥前国守護とともに北条氏が継承することとなり、鎮西探題と少弐氏の対立は鎌倉幕府滅亡まで続きました。

当初は複数体制でしたが、永仁4年（1296年）には北条実政が単独で鎮西探題に就任しました。正安元年（1299年）頃には評定衆や引付衆が設置され、組織体制が整備されました。

鎮西探題は、御家人に対して様々な文書を発給し、これらは形式によって鎮西御教書・鎮西下知状と呼ばれました。

鎮西探題の終焉

元弘3年（1333年）、後醍醐天皇の討幕運動（元弘の乱）が起こると、九州の武士団にも倒幕の綸旨が伝えられました。菊池武時が単独で挙兵しましたが、他の武士団の同調を得られず鎮圧されました。

その後、流刑先の土佐国を脱出した尊良親王が筑前国に入り、旗頭となりました。5月7日には京都で六波羅探題が陥落したという情報が九州に届くと、それまで幕府に従っていた少弐貞経や大友貞宗、さらに南九州の島津貞久らも幕府に反旗を翻しました。

5月25日、鎮西探題の北条英時は博多にて金沢種時ら一族240名（または340名）と共に自害し、鎮西探題は滅亡しました。その3日前には鎌倉幕府も滅亡しており、鎮西探題は幕府と共にその歴史を終えることとなりました。

鎮西探題のその後

室町幕府は、九州統治のために鎮西探題にならって九州探題を設置しました。また、江戸幕府は九州諸藩の監視と天領統治のために西国筋郡代を置きましたが、代官所は豊後国日田に置かれました。この郡代は「九州探題」とも呼ばれました。

所在地

鎮西探題の館は、筑前国早良郡の愛宕山（現在の福岡県福岡市西区愛宕）にあったとする説が有力でしたが、博多遺跡群から北条家の三鱗紋を有する土師器の皿や、14世紀前半に埋没した溝の上から発見された火葬人骨の一部に刀傷が見られることから、実際には博多の町内にあったと考えられています。

鎮西探題の一覧

北条兼時（1293年 - 1295年）
名越時家（1293年 - 1295年）
金沢実政（1296年 - 1301年）
金沢政顕（1301年 - 1316年）- 実政の子。
金沢種時（1316年 - 1317年） - ※代理。政顕の子。鎮西探題滅亡時に英時らと自害。
阿蘇随時（1317年 - 1321年）
赤橋英時（1321年 - 1333年）- 鎌倉幕府第16代執権・北条守時の実弟。

※「筑前國続風土記」では北条兼時を初代としていますが、1人体制が始まった北条（金沢）実政を初代とみなす見方が有力です。

関連事項

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