永山城

永山城（ながやまじょう）

永山城は、大分県日田市丸山町に位置する、かつて存在した日本の城です。通称として月隈城（つきくまじょう）と呼ばれることもありますが、これは誤りであるとされています。旧称は丸山城（まるやまじょう）です。この記事では、永山城と合わせて、その麓に置かれた日田陣屋についても解説します。

概要

永山城は、日田市街地の北部に位置する月隈山（つきくまさん）に築かれた平山城です。城の全貌については不明な点が多く残されていますが、山頂の本丸跡には、川石を用いた野面積みの石垣と、算木積みの隅を持つ石垣が現在も残っています。1601年に小川光氏によって築城され、当初は丸山城と名付けられました。その後、石川氏が入封した際に城の改築や城下町の移転が行われましたが、1633年には中津藩の預かりとなり、後に幕府直轄領となりました。1639年には、初代代官の小川氏によって廃城とされ、代わりに日田陣屋が置かれました。江戸時代中期には、揖斐政俊が西国筋郡代となり、郡代役所として機能しました。この郡代役所は、最後の西国筋郡代である窪田鎮勝が幕府歩兵部隊「制勝隊」を解散する明治元年まで続きました。

明治時代には、日田県知事となった松方正義によって、旧三の丸に知事官邸と日田県庁舎が設けられ、大分県に合併されるまで政治の中心地となりました。日田県の廃止後、旧三の丸の一部は日田山林学校となり、残りは日田区裁判所となりました。裁判所の移転後は、月隈公園として整備され、城山の石垣や水堀の一部が現在も残されています。しかし、陣屋跡（大手門堀沿い）は住宅地となっており、遺構は残っていません。2016年4月の熊本地震では、城山部分の石垣が崩壊し、大分県内の文化財としては最大規模の被害を受けました。

歴史・沿革

1601年（慶長6年）: 小川光氏が丸山城として築城。城の東に商家を移し、中津へ至る街道を整備しました。
1616年（元和2年）: 石川忠総が美濃大垣城から移封され、丸山城を改築して永山城と改名。城下町である丸山町を現在の位置に移し、豆田町と改めました。
1633年（寛永10年）: 中津藩の預かりとなります。
1639年（寛永16年）: 小川正長・氏行が初代代官となり、永山城を廃城し、麓に日田陣屋を築きました。
1648年（慶安元年）: 小川氏行が西下中に事故死。
1655年（明暦元年）: 小川正長が死去。子の行広と正久が日田代官となりました。
1665年〜1666年（寛文5年〜6年）: 肥後熊本藩主細川綱利の支配地となり、北西部に水堀（肥後殿堀）を造成。
1682年〜1686年（天和2年〜貞享3年）: 松平直矩が7万石で入封し、陣屋の改築を行いました。
1686年（貞享3年）: 代官小川正辰により藩が廃され、幕府直轄領となりました。
1767年（明和4年）: 代官揖斐政俊の時代に西国筋郡代役所となりました。

明治・大正年間

1868年（明治元年）: 佐田秀ら勤王派の志士により襲撃を受け、西国郡代の窪田鎮勝が陣屋から逃亡。新政府は豊後森藩と岡藩に取締りを命じました。
同年: 旧陣屋に日田県が置かれ、松方正義が入城。その後、日田県役所と改名。
1872年（明治4年）: 竹槍騒動などの農民による暴動を鎮圧するため、西街道鎮台分営が置かれました。旧永山城内に県庁舎と知事公舎が設置されましたが、同年に大分県に併合され廃県となり、鎮台分営も廃止。旧庁舎である旧陣屋も払い下げられました。
1915年（大正4年）: 公園に指定されました。

平成年間

2009年（平成21年）: 月隈公園整備用道路建設のため、公園内27箇所で試掘調査が行われました。
2011年（平成23年）: 永山城跡の埋蔵文化財調査が行われ、本丸の虎口北側石垣の遺構や建物礎石などが発見されました。
2012年（平成24年）: 7月中旬の九州北部豪雨により、月隈山登山道の一部が崩壊しました。同年度の発掘調査では、本丸跡の調査のほか、肥後殿堀跡の発掘調査が行われ、堀跡からは川石を利用した野面積みの石垣の一部が発見されました。
2016年（平成28年）2月9日: 「永山城跡」として大分県の史跡に指定されました。

熊本地震（2016年）

2016年4月14日と4月16日に発生した熊本地震の本震により、城山部分の石垣が崩落しました。日田市教育委員会は、本丸石垣の2箇所が崩壊し、大手石垣の石が公園歩道入り口付近まで落石した状況を報告しました。文化庁の現地調査や、馳浩文部科学相の視察も行われ、早期修復への理解が示されました。

構造

永山城は、山頂に本丸、中腹に二の丸、麓に三の丸が配置された構造でした。三ノ丸の南中央には大手虎口が開かれていました。南を表、北を背面としており、建物があったかどうかは不明です。本丸の表門と考えられている虎口脇の石垣は天守台ともいわれ、本丸奥の高台も天守台ではないかという説があります。山頂の本丸表虎口付近には、川石を使用した野面積みの石垣が現存しています。2009年の試掘調査では、本丸表門石垣は1680年代に築かれたものと推定され、北西麓からは細川綱利時代のものと推定される川石の石垣と土塁が、北西斜面中腹からは虎口石垣が出土しています。現在、三ノ丸にかかる石橋や切込み接ぎの石垣は、県庁と知事官邸を建てたころに建造されたものとされています。

日田陣屋

日田陣屋は、日田代官所または永山布政所と呼ばれた西国筋郡代役所です。ただし、永山布政所の名称については、昭和11年以降の文献に初めて記述が認められるもので、江戸期には一般に日田御役所と呼ばれていました。

構造

陣屋は、追手口跡から東の堀端にかけての現在道路や住宅地となっている一角にありました。郷土資料によると、堀から天満宮旧境内裏手まで長屋があり、敷地北東の隅に本陣（奥向）、中央に役所があったとされています。一方、山田家所蔵の「御陣屋平面図」では、南ほぼ中央に長屋門形式の正門と門番詰め所、陣屋の西側と堀側である北側に役宅が建ち並び、その中央に役所と奥向を併設した大型の建物が描かれています。『太宰管内志』によれば、本陣（奥向）は寛永年中に日隈城から移築されたものとされています。敷地の北東隅は、家相に基づいて鬼門除けのために入隅とされています。

歴代代官

以下は、日田陣屋の歴代代官の一覧です。

1639年: 小川正慶、小川氏行 （ともに日田在陣）
1656年: 小川正久、小川行広 （ともに日田在陣）
1665年〜1666年: 細川綱利が居城
1666年: 山田利信、竹内信就 （前者は日田、後者は高松に在陣）
1669年〜1671年: 近藤政勝 （高松在陣）
1677年: 永田貞清、三田守良 （前者は日田、後者は高松に在陣）
1682年〜1686年: 松平直矩の所領
1686年: 小川正久 （日田在陣）
1688年: 三田守良 （高松在陣）
1692年: 小長谷正綱 （高松在陣）
1698年: 室重福 （日田在陣）
1714年: 南条則明 （高松在陣）
1716年: 室重福 （高松在陣）
1717年: 池田季隆 （高松在陣）
1724年: 増田永政 （日田在陣）
1734年: 岡田俊惟 （日田在陣）
1753年: 岡田俊博 （日田在陣）
1758年: 揖斐政俊 （日田在陣）。後に西国筋郡代に昇任。
1772年: 揖斐僮年 （日田在陣）
1777年: 揖斐政喬 （日田在陣）
1786年: 揖斐政恒 （日田在陣）
1793年: 羽倉秘救 （日田在陣）
1809年: 羽倉用九 （日田在陣）
1810年: 三河口輝昌 （日田在陣）
1813年: 三河口輝長 （日田在陣）
1817年: 塩谷正義 （日田在陣）
1836年: 高木忠篤 （長崎代官預り）
1837年: 寺西元栄 （日田在陣）
1841年: 寺西東上 （日田在陣）
1841年: 竹尾忠明 （日田在陣）
1847年: 池田季秀 （日田在陣）
1861年: 池田季昶 （日田在陣）
1862年: 高木忠知 （長崎代官預り）
1862年: 屋代忠良 （日田在陣）
1864年: 窪田鎮勝 （日田在陣）。1868年に陣屋から退去。

脚注

関連項目

三隈 (丘)

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