西大寺 (岡山市)

西大寺の概要

西大寺（さいだいじ）は、岡山県岡山市東区西大寺にある名刹で、山号は金陵山です。本坊となる観音院は、高野山真言宗に属する別格本山で、主に千手観世音菩薩を本尊として祀っています。中国地方の三十三観音霊場の第一番札所としても知られ、その古い歴史と文化的背景から、地域の信仰の中心となっています。更に、この寺院は「会陽」と呼ばれる祭りが行われることでも著名であり、日本三大奇祭の一つとされています。

歴史

西大寺の歴史は古く、751年（天平勝宝3年）にまで遡ります。この年、周防国（現・山口県）の藤原皆足姫が観音像を金岡郷に安置したことが寺の起源とされています。777年（宝亀8年）には、安隆が現在の地に堂宇を建立したと伝えられています。

寺名は元々「犀戴寺」と呼ばれていましたが、後に後鳥羽上皇の祈願文を受けて「西大寺」に改名されたと言われています。1507年に記された『金陵山古本縁起』によると、1299年には堂宇が破壊されるも、本堂や三重塔、鐘楼などがあったことが示されており、当時から地方屈指の大寺として繁栄していたことが分かります。

会陽（裸祭り）

西大寺で行われる会陽（えよう）、通称裸祭りは、旧暦1月に行われる新年の祈祷行事「修正会」に基づいています。この行事は、東大寺の良弁僧正の弟子である実忠によって創始され、西大寺には開山の安隆が伝えたとされています。

会陽の祭りが現在の形になったのは1510年のことで、僧侶の忠阿が修正会の結願の日に人々に守護札を投げたことに由来します。それ以降、参加者は身体を裸にし、守護札を奪い合うようになりました。この祭りは毎年、2月の第3土曜日に行われます。

当日の準備としては、3週間前から神事が始まり、宝木という祭りに用いる木の材料が準備されます。当日は裸の男たちが集まり、「ワッショ、ワッショ」と叫びながら神聖な場所へ向かい、祭りの成功を祈願します。

祭りのクライマックスは、深夜に本堂から投げ込まれる2本の宝木を巡る争奪戦です。勝者は、その年の福男として名誉が与えられ、宝木は約1年間祝い主に祀られる習慣があります。参加資格は中学生以上の男性で、刺青や飲酒を禁止されています。

また、女性も祭りには特別な役割として参加しており、祭りの開始を告げる太鼓を打つのは全て女性です。彼女たちは白衣を纏い、この神聖な行事に祈りを捧げます。

伽藍と文化財

寺院の建物には、1740年に再建された仁王門や、1863年に再建された本堂をはじめ、さまざまな文化財が存在します。中でも451年の歴史を有する桧製の三重塔や、重要文化財として登録されている朝鮮鐘など、価値ある文化遺産が数多く残されています。これらの建物は、信仰の場としてだけでなく、岡山の日常生活の一部としても重要な役割を果たしています。

さらに、会陽祭りや伝統的な地域行事は重要無形民俗文化財として国に指定されており、地元の歴史や文化を後世に伝える大切な位置づけを持っています。

アクセス

西大寺へのアクセスは、JR赤穂線の西大寺駅から徒歩約10分、または両備バスの西大寺バスセンターからも徒歩10分ほどで行けます。祭りの開催日には臨時列車やバスが運行され、多くの参拝客で賑わいます。

西大寺はその歴史的背景、信仰の深さ、そして文化的活動において、地域の重要な象徴となっています。訪れる人々は、宗教的な意味合いだけでなく、地域の文化や歴史を学び、体験する貴重な場として多くの意義を見いだします。

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