西宮山古墳

西宮山古墳：6世紀の豪族墓から読み解く歴史と文化交流

兵庫県たつの市龍野町に位置していた西宮山古墳は、前方後円墳という形態をとる、弥生時代以降の古墳です。現在では墳丘は失われていますが、昭和29年から30年にかけて行われた発掘調査によって、その壮大さと歴史的重要性の一部が明らかになりました。

古墳の立地と発見

西宮山古墳は、揖保川西岸の丘陵地帯、標高約50メートルの地点に築造されました。その名称は、近隣の粒坐天照神社（延喜式内社）のある宮山の西側に位置していたことに由来しています。古墳の存在は、兵庫県立龍野高等学校グラウンド造成工事に伴う発掘調査によって確認されました。この調査によって、古墳の全貌と埋葬施設の詳細が明らかになる一方、残念ながら、貴重な遺跡は消滅することとなりました。

前方後円墳の構造と埋葬施設

西宮山古墳は、前方部を南西方向に向けた前方後円墳でした。墳丘からは、円筒埴輪や形象埴輪（家形、蓋形、盾形など）が多数発見され、当時の葬送儀礼における祭祀の様子が窺えます。

特に注目すべきは、後円部にあった片袖式の横穴式石室です。南南東方向に開口するこの石室は、壁面が持ち上がり、ドーム状の天井を形成する独特の構造を持っていました。この天井構造は、播磨地方の同時代の石室の中でも最古級かつ最大級の規模を誇る特徴的なものでした。

豊富な副葬品：朝鮮半島との繋がり

石室からは、驚くほど多くの副葬品が、ほぼ原位置を保った状態で出土しました。これは、盗掘を免れた貴重な発見と言えます。出土品には、金製耳飾、銅鏡、玉類、武器、馬具、須恵器、土師器など、多岐にわたる品々が含まれていました。

中でも、金製耳飾は特筆すべき発見です。その精巧な造りは、朝鮮半島との文化交流を示唆する重要な証拠となっています。また、多数の鉄製品や馬具の存在は、被葬者の高い社会的地位を示していると考えられます。これらの副葬品は、当時の社会構造や交易の様子を解き明かす上で、貴重な資料となっています。

西宮山古墳の消滅とその後

高等学校のグラウンド造成により、西宮山古墳の墳丘は消滅しました。しかし、発掘調査で得られた膨大なデータと出土品は、現在も歴史研究に役立っています。出土品は京都国立博物館に保管されており、その一部は、たつの市立龍野歴史文化資料館でも展示されている可能性があります。石室に使用された石材の一部は、龍野高等学校の旧庭園に残されているとも言われています。

西宮山古墳の意義

西宮山古墳の発掘調査は、6世紀前半から中葉頃の播磨地方における葬送儀礼や社会構造を理解する上で、非常に重要な情報を提供しました。また、朝鮮半島との交流の深さを示す証拠も提供し、古代日本の国際関係を考える上で重要な役割を果たしています。墳丘は失われましたが、その存在は、歴史の記憶として、そして今後の研究の礎として、未来へと繋がるのです。

参考文献

高島徹「西宮山古墳」『日本古墳大辞典』東京堂出版、1989年
「西宮山古墳」『兵庫県の地名』平凡社〈日本歴史地名大系29〉、1999年
* 『西宮山古墳 -西播磨の首長墓-』国立文化財機構京都国立博物館、2021年

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