西川甚五郎 (11代)

11代 西川甚五郎：激動の時代を乗り越え、西川を発展させた近江商人

11代 西川甚五郎（にしかわ じんごろう、諱は重威（しげたけ）1849年1月10日 - 1905年4月6日）は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した近江商人です。西川甚五郎家山形屋の11代目として、明治維新という激動の時代を乗り越え、西川の発展の基礎を築き上げました。

生い立ちと家督相続

嘉永元年（1849年）12月16日、近江国蒲生郡八幡（現在の滋賀県近江八幡市）で、山形屋10代 西川甚五郎の四男として生まれました。幼名は伊三郎と名付けられました。長男が夭折したため、後継者として育てられました。

当時の西川家は、経営環境が厳しい状況にありました。越前国で蚊帳織りが始まった影響で、近江蚊帳の営業者は減少。慶応2年（1866年）には、幕府の長州征伐のための御用金1千8百両の上納を求められるなど、苦境に立たされていました。

嘉永6年（1853年）2月15日、父である10代 甚五郎の死去に伴い、11代 甚五郎を襲名し家督を相続しました。

家業の立て直しと発展

11代 西川甚五郎は、八幡蚊帳が衰退していく中で、西川家を存続させるだけでなく、発展させることに成功しました。東京や大阪などに支店を開設し、本支店合わせて6店舗で販売を強化し、販路を拡大しました。また、工場を新設し、製造方法の改良にも取り組みました。

明治11年（1878年）には、従来の西川本家一括仕入れを改め、支店による一部商品の「現地仕入れ」を導入することで、コスト削減を実現しました。流通の変化に対応した柔軟な仕入れ方法への切り替えは、経営改善に大きく貢献しました。

新たに開設された支店は、現在の大阪市、尾道市、大分市、杵築市に設けられました。特に、明治9年（1876年）に開設された大阪支店は、後に「西川リビング」へと発展し、現在でもその名を知られています。

明治27年（1894年）には、八幡の同志である岡田八十次らとともに、輸出生糸の品質向上、輸出振興、雇用の創出を目指し、資本金5万円で八幡製糸株式会社を設立しました。翌年、50人繰で開業し、2年後には120人繰へと拡張し、生糸製造高792貫、工女80名を数える県下でも大規模な工場へと発展しました。（八幡製糸株式会社は、昭和4年（1929年）に解散）

明治29年（1896年）2月には、八幡大字宮内に西川蚊帳製造所を新設し、織機50台を擁し、24人の女性を雇用しました。

さらに、明治20年（1887年）には大阪支店で、明治22年（1889年）には東京日本橋店で、それまで自家で作るのが一般的だった布団の販売を開始しました。季節商品の蚊帳に加え、年間を通じて需要のある布団を扱うことで、安定した売上を確保することに成功しました。

地域経済への貢献

11代 西川甚五郎は、家業の発展だけでなく、八幡全体の産業活性化にも尽力しました。明治14年（1881年）には、八幡銀行創設の発起人の一人となり、設立認可を受けました。明治15年（1882年）2月には八幡銀行が発足し、西川傳右衛門家の当主である西川貞二郎が初代頭取に就任。甚五郎は取締役を務め、明治24年（1891年）には頭取に就任しました。

明治16年（1883年）から明治24年（1891年）まで滋賀県会議員を務め、滋賀県産業諮問委員なども兼任しました。また、同門の伊庭貞剛の後任として衆議院議員補欠選挙に立候補し、当選。明治31年（1898年）には衆議院議員となりました。

その他にも、中山道に通じる新道作りや八幡堀の改良浚渫作業を行うなど、地域の発展に大きく貢献しました。

明治31年（1898年）に、家督を息子の12代 甚五郎に譲り、明治38年（1905年）4月6日に生涯を閉じました。

11代 西川甚五郎は、近江商人としての才覚を発揮し、西川家の発展に大きく貢献しただけでなく、地域経済の活性化にも尽力した人物として、その名が語り継がれています。

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