西方寺 (羽島市)

西方寺（さいほうじ）は、岐阜県羽島市足近町直道に位置する真宗大谷派の寺院です。寺田山と号し、渋谷院とも称されます。この寺は羽島市で最も古い寺院として知られています。

歴史

西方寺の創建は、伝承によれば飛鳥時代にまで遡ります。推古天皇20年（612年）、聖徳太子がこの地に伽藍を整備したのが始まりとされ、当初は「太子寺」という法相宗の寺院でした。この地にはかつて善光寺の如来像が安置されていたと伝えられています。

その後、弘仁8年（817年）に天台宗に改宗し、斉衡3年（856年）には当時の美濃守であった藤原直道の法名にちなんで「西方寺」と改称されました。同時に、寺のある村の名前も「善光寺村」から「直道村」に変更されました。

治承5年（1181年）の治承・寿永の乱（源平合戦）では、墨俣川の戦いの際に、西方寺が墨俣川の西側にあったことから源氏の本陣が置かれました。しかし、源氏が敗北したため、兵火によって焼失するという悲劇に見舞われました。

貞永元年（1232年）には山号を「寺田山」と定め、嘉禎元年（1235年）には親鸞聖人がこの寺に逗留しました。当時の住職であった渋谷金王丸の三男・祐俊は、親鸞の教えに感銘を受け、真宗大谷派に改宗しました。これにより、西方寺は真宗の寺院として新たな歴史を歩み始めることになります。

戦国時代には、石山合戦で本願寺に加勢したため、織田信長の家臣である加賀井重望によって堂宇を焼き討ちされました。この際、本尊の阿弥陀如来像を槍で突いたところ、血がほとばしったという伝説が残っています。

文化財

西方寺は、数々の貴重な文化財を所蔵しています。その中でも特に重要なのが、岐阜県指定重要文化財である本尊の阿弥陀如来像です。この像は、寺の歴史と信仰を象徴する存在として大切にされています。また、絹本著色聖徳太子像や絹本著色羅漢像など、仏教美術の観点からも価値の高い文化財も伝えられています。その他、徳川将軍家から拝領した品々や書状なども保管されており、歴史的な価値も高いです。

西方寺は、その長い歴史の中で、様々な変遷を経験しながらも、地域の人々の信仰を集めてきました。現在も、羽島市の歴史と文化を語る上で欠かせない存在です。

参考文献

• - 『羽島市史』

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