西条エリ子

西条エリ子

西条 エリ子（さいじょう えりこ）は、1930年代の日本の俳優であり、レビュー界で一世を風靡したスターです。戦前の松竹歌劇団（SKD）を代表する娘役として人気を集め、その舞台姿は多くの観客を魅了しました。

キャリアの始まりとレビュー界での輝き

彼女のキャリアは、1929年に東京松竹楽劇部（後の松竹歌劇団、通称SKD）の第2期生募集に合格したことから始まります。この時、彼女は同期のオリエ津阪（入団当時は津阪織江）らと共に、華やかなレビューの世界へ足を踏み入れました。卓越したダンススキルと可憐な容姿はすぐに注目を集め、1930年代に入ると、レビュー・ブームの波に乗ってSKDの看板スターの一人となります。

当時の作家、野口冨士男は、その著書『いま道のべに』の中で、西条エリ子の舞台での美しさを「空前絶後」と絶賛し、舞台上はもちろんのこと、間近で見ても観客を「ぞくぞくさせるほど美しかった」と回想しています。彼女は「娘役」として、その愛らしさと輝きで観客の心を掴み、SKDの黄金期を支えました。1933年には、京都日日新聞において、SKDのトップスターである水の江瀧子や同期のオリエ津阪と並び、「東都レヴュー界の明星」として紹介されており、その人気と実力は疑う余地がありませんでした。

スキャンダルとその後

レビュー界で輝きを放っていた西条エリ子ですが、彼女の人生は予期せぬスキャンダルによって大きく揺れ動きます。特に注目を集めたのは、1935年に起こった、いわゆる「男装の麗人」こと増田富美子との心中未遂事件です。この出来事は、同性愛をめぐる駆け落ちとして当時大きなスキャンダルとなり、社会に衝撃を与えました。二人の関係や事件の詳細は、当時の社会情勢の中で様々な憶測を呼び、多くのメディアで報じられました。この事件は、西条エリ子のキャリアに大きな影響を与えただけでなく、戦前期日本の同性愛に対する社会の認識を映し出す出来事としても記憶されています。事件後、彼女がどのような道を歩んだか、詳細な情報は限られていますが、この一件は彼女の名前をレビュー史のみならず、当時の社会史にも刻むこととなりました。

主な出演作品

西条エリ子が出演した作品には、以下のものがあります。

若さと熱の集団芸術松竹少女歌劇の一日（1933年）
うら街の交響楽（1935年）
緑の地平線 前編・後編（1935年）
白衣の佳人（1936年）

これらの作品は、当時のレビューや映画における彼女の活躍を知る上で重要な手がかりとなります。

西条エリ子は、短い活動期間の中で、圧倒的な美しさとパフォーマンスでSKDのスターダムを駆け上がり、レビュー界に確固たる足跡を残しました。同時に、私生活での出来事が当時の社会に波紋を広げることとなり、その生涯は華やかさと波乱に満ちたものでした。彼女の存在は、1930年代という激動の時代のレビュー文化と社会風俗を語る上で、欠かせない人物の一人と言えるでしょう。

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