西条凡児

西条凡児 - 日本の漫才師・漫談師の草分け

西条凡児（さいじょう ぼんじ）は、1914年に大阪府大阪市で生まれた日本を代表する漫才師、漫談師、そして放送タレントです。本名は河内弘明。彼は特に毒舌と鋭い社会風刺が特徴の漫談で知られ、戦後の日本において民間放送が普及し始めた時期に多くの人々の心を掴みました。

生い立ちと修行時代

凡児は、旧制浪華商業学校を卒業後、関西大学の専門部を中退します。最初は五代目笑福亭松鶴に弟子入りしましたが、本格的に芸人を目指すために古川ロッパや初代大辻司郎にも弟子入りを希望します。しかし、断られた末、知人の紹介により、当時「漫談屋」として知られた花月亭九里丸の内弟子として修行することになりました。彼の名「西条」は、九里丸のペンネームおよび詩人・西条八十から付けられ、「凡児」は麻生豊の漫画『只野凡児』に由来しています。

修行の厳しさに耐えかねた凡児は、内弟子の期間が1年であったにも関わらず、九里丸との師弟関係を解消しました。この関係は後に同業者として修復されましたが、その後は正式な弟子関係には発展しませんでした。

デビューと戦後の成功

彼は1935年に九条芸児とのコンビ「九条芸児・西条凡児」として千日前の寄席「小宝席」でデビュー。彼らは「インテリ漫才」として、大学進学を中退した凡児のキャラクターを前面に出したスタイルで注目を集めます。しかし、彼らは徴兵され、相方の芸児が戦病死する悲劇を迎えます。その後、凡児は復員後に一時的に女性漫談師一枝とコンビを組むものの、彼の本来のスタイルでの聴衆との懸け橋が欠けている状態が続きました。

戦後、南海放送が彼の才能に目を付け、ピンでの漫談を披露する機会を提供します。彼の代表作である「ボロクソダイジェスト」は、一般の生活や風潮に対する批判をユーモラスに表現し、瞬く間に人気を集めました。

メディアでの活動

1955年に新日本放送（NJB）の『凡児のお脈拝見』および『素人名人会』の司会に抜擢され、彼の知識の深さと広がりを生かしたトークが視聴者に親しまれました。特に『凡児のお脈拝見』は、「こんな話がおますんや……」というフレーズで始まる時事放談番組で、流行語になるほどの影響力を持ちました。この頃に凡児はNJB専属のタレントとして君臨しました。

その後、1964年には『おやじバンザイ』の司会として全国的な知名度を得ましたが、1970年には建設会社への恐喝容疑で一時期メディアから姿を消すことになります。これが原因で彼は『おやじバンザイ』の司会を降板せざるを得ませんでしたが、1972年に『凡児の娘をよろしく』で復帰し、活動を続けました。最終的には1979年に同番組が終了してから、メディアの第一線を退きます。

晩年と影響

1993年5月31日、急性心不全により78歳で亡くなりました。彼は4年前から健康を損ねて入院していましたが、葬儀は故人の遺志により行われず、遺体は大阪大学に献体されました。死後の2000年には第5回上方演芸の殿堂入りを果たします。彼の芸風は、反骨精神が見え隠れし、当時の世相を切り取る独特の視点が評価されました。

凡児の功績は単に笑いを提供するだけにとどまらず、社会を鋭く観察し、その中で人々に笑いを通じてメッセージを届けるという、彼ならではの重みがあります。彼のスタイルや声は、今も多くの後輩たちに引き継がれ、漫才の黄金時代を支えた重要な人物として語り継がれています。

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