大辻司郎

大辻司郎とは

大辻司郎（おおつじ しろう、1896年8月5日 - 1952年4月9日、本名：大辻四郎）は、日本の著名な活動弁士および漫談家で、漫談という言葉を作り出した先駆者です。彼は自身を「漫談家元」と名乗り、漫談の発展に重要な役割を果たしました。また、もく星号墜落事故の犠牲者としても知られています。

経歴

大辻は東京市日本橋に生まれました。甲洋学舎を卒業後、父親が経営していた「尾張屋」という株屋に携わっていましたが、後に活動弁士に転身しました。彼は、活動弁士の染井三郎や柳思外に師事し、浅草帝国館で初舞台を踏みました。1916年には独学で活動写真の弁士として活動を始め、特に喜劇を専門とした弁士としての道を歩みました。

彼の話術は独特で、特に『勝手知ったる他人の家』や『胸に一物、手に荷物』などのフレーズが人気を博し、瞬く間に名声を得ることとなります。この時期に、同じく弁士として活動していた徳川夢声と出会い、彼に「天才」と言わしめるほどの力強い話し方が評価されました。

1923年に関東大震災が発生すると、東京の映画館が利用できなくなり、弁士たちは一時休業を余儀なくされました。この状況を機に、夢声や柳家小さんらの支援を受けて、「漫談」という新しい形式に挑むことを決意します。1924年には「漫談家」として再スタートを切り、代表的フレーズの「アノデスネ。ボクデスネ」で広く知られるようになりました。

その後、西村小楽天や井口静波、牧野周一など、他の弁士たちも漫談に転身し、この新しい表現スタイルは徐々に広まっていきました。1926年には、夢声らと共にナヤマシ会を結成、創造的な即興芸で観客を楽しませることに注力しました。1933年には笑の王国を結成し、漫談の人気をさらなる高みへと導きました。

最後の時

1952年3月31日、大辻は旧活弁仲間の活動大写真を偲ぶ夕会で司会を務め、その才能を再び披露しました。しかし、4月9日、彼は羽田から長崎での博覧会に向かう途中、搭乗した日航機「もく星」が三原山に墜落し、他の乗客とともに命を落としました。この事故により、彼の生涯は突然の幕を閉じます。

死をめぐる混乱と遺族

もく星号墜落事故に関しては情報が錯綜し、「一部或いは全員の乗客が救助された」というような未確認情報が流れました。その結果、「危うく助かった大辻司郎氏」の談話が捏造され、『長崎民友新聞』に写真付きの記事として掲載される騒動が発生しました。

大辻の家族について述べると、次男の大辻伺郎は俳優として活動していましたが、長男は13歳で亡くなっています。伺郎は1973年に父の名を継ぎましたが、数か月後に自ら命を絶つという悲劇が起こりました。

映画作品

大辻は映画にも出演しており、1949年の作品『踊る竜宮城』では河童の大将の役を演じました。彼の影響は今日に至るまで多くの漫談家たちに引き継がれ、喜劇の世界で生き続けています。

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