西武E851形電気機関車

西武E851形電気機関車

概要

西武E851形電気機関車は、1969年に西武鉄道が新たに設計・製造した電気機関車であり、私鉄では唯一、動軸を6軸も備えています。この「F形電機」と呼ばれる形式は、全体としての自重や牽引力、定格出力が私鉄として最大級の標準を誇ります。西武鉄道内では「ジャンボ」として知られ、1996年までの貨物輸送を支えました。

導入背景

西武秩父線は観光輸送だけでなく、地域の産業を支えるための石灰石を原料としたセメント輸送にも用いられる予定でした。1967年に工事が始まり、1969年に正式に開通しました。ここでのセメント輸送は、急勾配やトンネルを通過する必要があるため、強力な牽引力を持つ電気機関車が求められました。しかし当時の西武鉄道には力不足の旧型機関車しかなかったため、E851形の開発が急務となりました。最終的に、4両のE851形が新製され、その性能は国鉄の最新型の電機に基づいて設計されました。

車両設計

E851形は全長16,500mmの全鋼製箱型構体で、機器室と運転台を一体化しています。外観では国鉄のEF65形とよく似ていますが、側面のデザインには西武鉄道独自の特徴が加えられています。このようなデザインは当時の電気機関車では新鮮な印象を与えました。特に、全体の色合いはスカーレットを基調とし、アイボリーの帯が施されています。これにより他の電気機関車との識別が容易となっています。

主要機器と性能

E851形は主に国鉄EF81形と同様の機器を採用しており、重連運用にも対応した設計です。6基の主電動機を装備し、最大で100両の貨車を牽引する能力を持っています。この能力により、山岳路線での安定した輸送が実現されました。特に定格牽引力は23,220kgfで、非常に高い性能を誇っています。

運用

この機関車は1969年の西武秩父線開通と共に運用を開始しました。具体的には、東横瀬駅を起点にし、池袋や国分寺方面へのセメント輸送を担いました。1973年には最大の輸送量に達しましたが、その後はトラック輸送の拡大とともに利用が減少しました。1996年には貨物輸送が全廃となり、E851形も定期運用を終えました。

さよなら運転

貨物輸送の終了にあたり、関係者の熱意によってさよなら運転が計画されました。最初で最後の客車列車牽引という特別な運行で、1996年5月に実施されました。この運転は多くの鉄道ファンから注目を集め、本形式の最後の姿を記録する場ともなりました。

現在の状況

運用が終了した後、E851形は全て廃車されましたが、唯一E854のみが静態保存されています。この車両は偶に一般公開される機会もあり、鉄道ファンに愛され続けています。

まとめ

西武E851形電気機関車は、設計以降長きにわたり西武鉄道の貨物輸送を支えた名機であり、当時の技術力とデザイン思想が体現されています。現代の鉄道界においても、その存在感は色あせることなく語り継がれています。

もう一度検索