西洋医学

西洋医学の基本とその歴史

西洋医学、または生物医学とは、欧米で発展してきた医学の体系を指します。日本では明治期の初めから、この言葉が使われ始めました。ただし、「西洋医学」という名称は正式な医学用語ではなく、文脈によってその意味は異なる場合があります。この医学体系は、中国医学など他の伝統医学と異なる独自の概念や理論、治療法を持っており、特に古代ギリシャやローマの医学が基盤となっています。このため、西洋の伝統医学としては、古代ギリシャの四体液説やプネウマ論が重要視され、これに基づいて形成されたアラビア医学、ユナニ医学が存在します。

歴史的背景

西洋医学の起源は、古代ギリシャのヒポクラテスにまで遡ります。彼は「医学の父」とも呼ばれ、多くの医学的観察を行い、病気に対する自然な治癒力の重要性を強調しました。その後、古代ローマの医師ガレノスが登場し、アリストテレスの学問を基に医学としての体系が整えられました。ガレノスの著作はその後数世代にわたって医療の権威とされましたが、中世の間は医学の発展が停滞しました。

中世においては、外科的な技術はキリスト教徒によって重視されず、病気は神の意志として受け入れられました。この時代、理容師が外科的処置を行っていたため、医療は学問としての発展を見ることができませんでした。

ただし、古代ギリシャの医学知識はイスラム世界で保存され、イブン・スィーナーやイブン・ルシュドのような学者によって研究が続けられました。ルネサンス期には、これらのイスラム医学が新たに翻訳され、欧州の大学での教育に組み込まれるようになり、実証主義の萌芽が見られました。

日本における西洋医学の受容

日本では1543年にポルトガル人が銃器を持ち込んだ際に、同時に西洋医学が伝えられました。特に、宣教師は医療を通じてキリスト教を布教しました。1560年代には、豊後に日本初の洋式病院が設立され、その後も西洋医学は「南蛮医学」として外科手術などの分野で重要な役割を果たしました。江戸時代の終わりには、オランダから学ぶ蘭方医学が重要視され、幕末には多くの西洋医学書が翻訳されました。

明治維新以降は、漢方医学が廃止され、西洋医学が公式な医学として位置づけられました。その後も技術の向上が重視され、医療分野では多くの革新が見られました。

参考文献

• - 小川政修『西洋医学史』日新書院、1943
• - 矢部一郎『西洋医学の歴史』恒和選書、1983
• - ヒポクラテス、常石敬一『ヒポクラテスの西洋医学序説』小学館、1996
• - ディーター・ジェッター『西洋医学史ハンドブック』朝倉書店、1996

このように、西洋医学は歴史的な背景と文化の影響を受けながら発展してきました。現代は科学技術の進歩により、患者に対する医療の質も向上していますが、その根幹には古代の知識と探求心が息づいています。

もう一度検索