西浜町 (大阪府)

西浜町：大阪の皮革産業と歴史を彩った町

西浜町は、かつて大阪府西成郡に存在した町で、現在の大阪市浪速区の一部に位置します。この地には、興味深い歴史と独特の町並みが息づいていました。

渡辺津からの移転と町の成立

西浜町の起源は、渡辺津付近に住んでいた住民たちの移転に遡ります。彼らは数度にわたる移転を経て、1701年（元禄14年）から1706年（宝永3年）にかけて、西成郡木津村の西部に移り住みました。これが、西成郡渡辺村の成立です。同時に、七瀬川右岸の月正島の南縁には、渡辺村の耕作地として西成郡七瀬新田（ななせしんでん、七瀬新地とも呼ばれた）が誕生しました。この移転と新田開発は、河村瑞賢による木津川の改修と十三間堀川の開削事業と軌を一にします。十三間堀川の開削費用は、西成郡津守新田の地主が負担したと伝えられています。

江戸時代と消防活動

江戸時代を通じて、渡辺村は大坂三郷天満組の付属地として位置づけられました。1724年（享保9年）の大火では、消火活動における貢献が認められ、その後長きにわたって消防役を担うこととなります。この事実は、西浜町の住民たちの結束力と防災意識の高さを物語っています。

明治時代以降の変遷

明治時代に入ると、渡辺村は藻刈町、野上町、霧島町、菜摘町、千里町、入江町、穂波町、洲先町、栄町と細分化され、七瀬新田は七瀬町となりました。その後、1887年（明治20年）、これらの町が合併して西成郡西浜町が成立。1889年（明治22年）には町村制を施行し、単独の町として存在しました。しかし、1897年（明治30年）に大阪市第1次市域拡張により南区に編入され、西浜町は廃止されました。その後、南区西浜町は西浜北通、西浜中通、西浜南通と改編され、1925年（大正14年）には浪速区に転属しました。以降も、幾度かの町名改編を経て、現在の浪速区の一部となっています。

西浜町の経済と産業

西浜町は、皮革産業が盛んな地域として知られていました。和太鼓の製造も行われており、多くの皮革商が活躍しました。有本楠太郎、岩田光造、清阪作之助、佐々木益太郎、篤田治良兵衛、西森源兵衛、松田良助といった皮革商たちの名前は、西浜町の経済史に刻まれています。

日本大学教授の井上貞蔵は著書『一経済学徒の断草』の中で、西浜町を「部落」と表現し、北島町と共に日本屈指の大部落であると指摘しています。同書には、北島町には貧民が多く、西浜町には金持ちが多いという興味深い記述も見られます。西浜町には問屋格のものが軒を連ね、革成金と呼ばれる人々も少なくなかったようです。

西浜町ゆかりの人物

西浜町には、西森源兵衛（皮革商）、沼田嘉一郎（衆議院議員、大阪市会議員）など、著名な人物も輩出しています。彼らの存在は、西浜町の社会的地位の高さと、人材育成の盛況を物語っています。

現代への継承

西浜町は消滅しましたが、その歴史と文化は、現在の大阪市浪速区に受け継がれています。かつての繁栄を偲ばせる地名や、皮革産業の伝統、そして、多くの著名人が育んだ文化は、現代の浪速区の個性の一部を形成しています。西浜町という町名は消えても、その歴史は、人々の記憶の中に生き続けています。

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