西浦の田楽

西浦の田楽

西浦の田楽（にしうれのでんがく）は、静岡県浜松市天竜区水窪町の西浦観音堂で開催される伝統的な民俗行事です。地域ではこの催事を「おまつり」や「木の根祭り」と呼ぶことが多く、その歴史は深いものがあります。

1970年には、他の民俗芸能33件と共に無形文化財の保護対象として認定され、国の補助により歴史的記録が作成されました。また、1976年5月4日には重要無形民俗文化財に指定され、その価値が認められました。西浦の田楽は、養老3年（719年）に行基が訪れ、観世音仏と仮面を作ったことから始まるとされ、この地域の文化の一部として根付いています。

田楽の起源を辿ると、現存する最古の資料は延宝年間（1681年）のもので、室町時代に遡ることが可能です。特に三遠南信（三河・信濃・遠江）地域には数多くの田楽系の芸能があり、長野県阿南町新野の雪祭りとの関係も興味深いです。この地では、かつて西浦から盗まれたとされる面が今も伝えられています。

祭りは旧正月に行われ、主に「能衆」と呼ばれる舞い手によって45種類の舞が演じられます。舞は、五穀豊穣や無病息災を願うもので、祭りの中では「庭定め」や「鎮守祭」、「御神供ばやし」、そして「天狗、天伯の神迎えの式」など、さまざまな儀式が行われます。これらの儀式終了後、田楽と呼ばれる演目が続き、特定の形式の地能三十三番、はね能十三番、獅子・しずめが夜通し披露されます。

田楽芸や田遊びの要素が取り入れられたパフォーマンスは、芸術的な価値を持ち、特に「もどき」と呼ばれる演出方法が特徴です。これは、各曲の後にその曲を復演する手法であり、観客を楽しませる貴重な工夫といえます。

伝承者については、かつては家の長男とその家長に舞が継承される決まりでしたが、過疎化により次男や三男にも伝えられるようになりました。浜松市水窪地域には、田楽に関する資料が展示されている民俗資料館があり、訪れることでこの伝統文化の魅力を体験できます。水窪の地域住民は、田楽を通じて文化の継承に力を入れ、地域の誇りとなるように他の世代へその素晴らしさを引き継いでいます。

このように、西浦の田楽は地域に根ざした歴史と文化を持つ貴重な伝統芸能であり、観光客や地元住民にとっても大切な祭りとなっています。

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