西海道談綺

西海道談綺

『西海道談綺』は松本清張が1971年から1976年まで『週刊文春』で連載し、1976年に書籍化された長編伝奇小説です。この作品は、江戸時代の九州・日田地域を舞台にしており、隠された金山を巡る謎や冒険が展開されています。松本清張の作品の中でも特に広がりのある物語であり、1983年にはテレビドラマ化されました。

あらすじ

物語は文化・文政の時代に設定され、主人公の伊丹恵之助は勝山藩の藩士として生活しています。彼は妻である志津と共に新婚生活を送っていましたが、ある日、彼の宿直を早退した際に、妻と用人の服部源左衛門の密会を目撃します。この出来事が引き金となり、恵之助は激しい復讐心に駆られ、源左衛門を殺害し、妻を廃坑に突き落とすという衝撃の行動に出ます。

その後、恵之助は国を出て放浪の旅に出ることになり、途中で小藩の参勤交代の一行と出会います。その中で、恵之助は茶壺宰領の力を借りて彼らを救うことになります。ここで出会った坊主・北条宗全は恵之助の過去を知っており、江戸の長屋で彼を世話してくれることになります。恵之助はしばらくの間、役職に就かない生活を送りますが、やがて御家人・太田半左衛門の養子となり、新たに太田姓を名乗ることになります。

ある日、恵之助は西国郡代地方手附として実態調査のために日田へ赴任することになりますが、その前任者である鈴木九郎右衛門が謎の急死を遂げていることを知ります。恵之助はこの急死の真相を探るため、他の同行者たちと共に行動する中で、さまざまな陰謀や神秘的な現象に遭遇します。宇佐石体権現の山伏の集団と出会い、彼らが持つ超自然的な力に恐れを抱く一方、犬神の祟りや謎の警告が絡み合い、恵之助は次第に大規模な謀略に巻き込まれていきます。

これは始まりにすぎず、恵之助は彼を待ち受けるさまざまな試練に立ち向かうことになります。果たして彼は過去の罪と向き合い、運命を変えることができるのか。

主な登場人物

太田恵之助（伊丹恵之助）

藩士であり、鉱山の経験も持つが、妻を巡る事件から藩を脱藩する運命を辿る。

志津

恵之助の妻。用人・源左衛門との密会が悲劇を引き起こす。

北条宗全

茶壺組頭の坊主で、恵之助の過去を知り、彼を助ける。

甚兵衛

鉱山の技術者として、坑内の設備設計を担当。

物語はこのように、彼らを中心に絡み合う人間関係と謎が展開されます。各登場人物がどのように物語に影響を与えていくのかが一つの見どころです。

関連情報

『西海道談綺』の執筆には、実際に大分県の日田市にある金山跡が取材されています。作品内では修験道の要素も重要な位置を占めており、作品の舞台となる地域の裏話や歴史を探る楽しさもあります。このように、多様な要素が詰まった小説として高い評価を得ています。

また、1983年にはこの作品に基づくテレビドラマが放映され、多くの視聴者に親しまれました。

西海道談綺は、松本清張の文筆活動の中で際立った位置を占める作品であり、今日でも多くの人に読み継がれています。

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