西道仙

西 道仙（にし どうせん）

西道仙（1836年 - 1913年7月10日）は、明治時代にジャーナリスト、政治家、教育者、そして医師として活躍した人物です。本名は喜大、別号を琴石と称しました。西家は代々肥後（現在の熊本県）で医業を営んでおり、西周の一族にとっては本家にあたります。

生涯

肥後国天草（現在の熊本県天草市）に生まれた西道仙は、17歳で帆足万里に師事しますが、その年に祖父と父が相次いで急逝したため、学資が続かなくなります。その後、医家に住み込みながら医術を学び、代診を務めるなどして各地を転々としました。

1863年、長崎の酒屋町で医師として開業すると同時に、子供たちに読み書きを教え、生計を立てました。この頃の弟子には、後に漢学者となる足立敬亭がいます。1873年には、瓊林学館という私塾を長崎の桶屋町・光永寺に開きました。瓊林学館では、漢学者の谷口藍田を館長に迎え、イギリス人のデントを英語教授として招聘し、道仙自身は督学として生徒300名を指導しました。

ジャーナリストとしての活動もこの頃から本格化させ、1876年2月に復刊された『長崎新聞』の編集長に就任。民衆・民生を重視する編集方針をとり、投書欄を充実させることで民権思想を広めました。1877年1月には『西海新聞』と改称し、郡区町村会の開設を提唱したり、国会急進論を7回にわたって連載したりしましたが、これが新聞紙条例に触れ、1ヶ月の私宅禁固処分を受けました。

1878年2月には西海新聞社を去り、『長崎自由新聞』を創刊して自ら社長となりました。西南戦争が勃発すると、西郷隆盛をひそかに応援していたと伝えられています。西郷らが城山で自決した際には、会を催して課題詩を賦しました。

孤軍奮闘 囲みを破って還る

一百里程 堅塁の間

吾が剣已に摧れ 吾が馬斃る

秋風骨を埋む 故山の山

この詩はすぐに『長崎自由新聞』に掲載され、後年、徳生還が『古今名家詩抄』を編纂した際に誤って南洲（西郷隆盛）の作として採録されたため、西郷隆盛の城山での絶命の詩として広く知られるようになりました。西郷の死後、道仙は落胆し、『長崎自由新聞』を廃刊しようとしましたが、社員の懇願により発行を継続しました。

1879年3月には東京へ赴き、三条実美、成島柳北、勝海舟、大沼枕山などを訪問。長崎に戻ってからは、西南戦争に関する事実と異なる書籍が出回っていることを批判するため、『近時筆陣』を執筆しようとしましたが、官憲によって出版を許可されませんでした。その年末には公選により長崎区長に選出され、「これぞ自治制の基礎」と喜びましたが、わずか1日で辞職しました。

1892年には「長崎文庫」を創立し、古文書の収集・刊行に尽力しました。その後、町会議員、区会議員、区会議長、市会議員、医師会会長を歴任し、激しい反対を押し切って水道敷設を実現するなど、長崎の発展に大きく貢献しました。晩年は門を閉ざして読書にふける日々を送り、求めに応じて長崎市中に多くの金石文を残し、78歳でその生涯を閉じました。墓所は長崎市寺町の大音寺墓域にあります。

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