西郷四郎

西郷 四郎（さいごう しろう）

西郷四郎は1866年3月20日、福島県若松市に生まれた柔道家で、弓道や泳法の指導者としても知られています。彼は講道館の四天王の一人であり、富田常雄の小説『姿三四郎』のモデルとしても有名です。彼の多彩な人生と功績を振り返ります。

生い立ちと教育

西郷は会津藩士・志田貞二郎の三男として誕生しました。しかし、戊辰戦争を避けるため、彼の家族は新潟県阿賀町に移住しました。その後、16歳のときに元会津藩家老の西郷頼母の養子となり、福島県伊達郡にある霊山神社にて、頼母のもとで育てられました。1882年に上京し、成城学校に入学。この際、天神真楊流柔術の井上敬太郎道場で修行を始めました。やがて嘉納治五郎にその才能を見いだされ、講道館に移籍します。

1883年には初段を取得し、柔道における地位を確立するための第一歩を踏み出しました。

柔道界での足跡

1886年、警視庁で開催された武術大会において、講道館柔道が柔術の他の流派を相手に勝利を収めます。この勝利により、講道館柔道は警視庁の正課科目として採用され、その後の柔道発展の礎となりました。この大会で四郎は戸塚派揚心流の好地圓太郎を特技「山嵐」で破り、名を馳せました。

1890年、四郎は嘉納治五郎の代わりに講道館の師範代となりますが、同時に講道館を離れることとなりました。彼は「一介の柔道家で終わりたくない」と語り、より多くの道を求めました。その後、大陸運動に参加し、鈴木天眼とともに新聞の編集長としても名を馳せます。1902年にはセクション紙『東洋日の出新聞』を発行し、同時に長崎にて柔道や弓道の指導を行いました。

病と死

1920年からは病気療養のため広島県尾道に移り、静かな生活を送っていました。1922年12月22日に尾道で亡くなりました。彼の死を知った嘉納治五郎は、彼の才能を評価し、講道館から六段を追贈しました。彼の墓は長崎市にあり、顕彰碑も建立されています。

得意技「山嵐」

四郎の得意技「山嵐」は、その独自性と技術の鋭さで知られています。この技は幼少期に漁船での経験を活かしたもので、相手の足を刈る際の瞬発力が非常に優れたものとされます。嘉納治五郎からは「彼の得意技においては、幾万の門下が未だ右に出た者はなし」と称賛されたほどです。

また、「山嵐」は古流柔術の技名の一つであることから、その影響や技の進化ついても議論がありますが、四郎自身の創意工夫による技であるという意見も強いです。

フィクションへの影響

西郷四郎は多くの小説や映画に登場し、特に『姿三四郎』においては彼のイメージが象徴されています。夏目漱石の『坊っちゃん』のキャラクター「山嵐」も、彼をモデルにしていると言われています。また、彼の名前と技術は、数多くの創作物に影響を与え続けています。

まとめ

西郷四郎は日本柔道の発展に大きな足跡を残した人物であり、彼の生涯や技術は今なお多くの人々に影響を与えています。その功績や技は、柔道界だけでなく、文学や映画など多岐にわたって引用され、日本文化の一部として息づいています。

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