西馬音内の盆踊

西馬音内盆踊り

西馬音内盆踊（にしもないのぼんおどり）は、秋田県雄勝郡羽後町西馬音内に伝わる伝統的な盆踊りです。その歴史と文化的な価値から、国指定の重要無形民俗文化財、そしてユネスコ無形文化遺産にも登録されています。毎年8月16日から18日の3日間、西馬音内本町通りを舞台に開催され、多くの人々を魅了します。

毛馬内の盆踊、一日市の盆踊と合わせて秋田県三大盆踊りと称されるほか、日本三大盆踊りの一つとも評されることもあります。

概要

西馬音内盆踊は、中央に設けられた囃子場と、通り沿いに焚かれるかがり火を囲んで踊り子たちが踊る形式で行われます。踊り子たちは亡霊に扮し、独特の衣装を身にまとうのが特徴です。踊りの開始は、通りの中央に作られた矢倉の上にいる囃子方の掛け声によって合図されます。

踊り子の服装は、浴衣や平袖に編み笠、あるいは目だけを出した頭巾など様々です。特に女性は、手作りの半月型の編み笠を被り、端縫い（はぬい）衣装と呼ばれる複数の布を縫い合わせた独特の衣装をまとい、顔を隠すことで死者を表現しているとされています。この頭巾は彦三（ひこさ）頭巾と呼ばれます。他にも、藍染の浴衣やしごき帯と呼ばれる赤い帯も特徴的です。

囃子には、笛、大小の太鼓、鼓、三味線、すり鉦、鉦といった楽器が用いられ、甚句と地口の二種類の歌が歌われます。音頭は地口に合わせて踊るもので、がんけは音頭よりも速いテンポの甚句に基づいたもので、歌詞や踊りに亡者の踊りとしての物悲しさがあるとされます。

歴史

西馬音内盆踊の起源については、正確な記録が残されていません。伝承によれば、正応年間（1288 - 1293年）に修行僧の源親が蔵王権現（現在の御嶽神社）の境内で豊年祭りとして踊らせたのが始まりとも、戦国時代末期の慶長6年に西馬音内城主小野寺茂道が最上義光に攻め滅ぼされた際、家臣や領民たちが菩提寺で慰霊の盆踊りを行ったのが始まりとも伝えられています。

江戸時代後期の菅江真澄の書物や門屋養安の日記にも、西馬音内盆踊に関する記述は見られません。しかし、明治40年に河東碧梧桐が見物した盆踊りの様子を自著に描写しており、その頃には既に特徴的な盆踊りとして存在していたことが伺えます。

大正時代には、盆踊りに対する当局の干渉が強まりましたが、西馬音内では町民や有力者が抵抗し、伝統を守り抜きました。昭和初期には、東京日日新聞社の要請で「臨時盆踊り大会」が開かれ、外部からの注目を集めました。その後、各地での公演を経て、1935年には日本青年館主催の「全国郷土舞踊民謡大会」に東北地方代表として出場し、踊りの原型が確立されました。

戦後、1947年には西馬音内盆踊保存会が設立され、1958年には開催時期が新暦に変更されました。1981年には国の重要無形民俗文化財に指定され、その価値が広く認められました。2020年には新型コロナウイルスの影響で中止となりましたが、2022年には3年ぶりに観客を入れて開催され、多くの人々を魅了しました。2022年11月には、ユネスコ無形文化遺産にも登録され、国際的な評価も高まっています。

その他

西馬音内盆踊りの原形ともいわれる元城盆踊りも、現在まで保存会によって受け継がれています。

西馬音内盆踊保存会は、地域伝統芸能大賞やサントリー地域文化賞など、数々の賞を受賞しています。

メディアでも度々紹介されており、NHKの「ふるさとの歌まつり」や、フジテレビの「浅見光彦シリーズ」の題材にもなっています。また、西馬音内盆踊りを歌った楽曲も発表されています。

西馬音内盆踊は、その独特な文化と歴史を持つ、秋田県を代表する伝統芸能です。

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