視程外射程ミサイル

視程外射程ミサイル（BVRミサイル）とは

視程外射程ミサイル（Beyond-Visual-Range missile, BVRミサイル）とは、有効射程が20海里（約37km）以上の空対空ミサイルのことです。この長射程を実現するために、2段式ロケットモーターやブースターロケット、ラムジェットエンジンなどが用いられています。また、目標を追尾・捕捉する能力も重要で、ミサイルは飛行中に目標情報を更新するデータリンクシステムを備えています。

誘導方式の進化

初期の空対空ミサイルは、発射母機から照射されるレーダー波を追尾するセミアクティブ・レーダー・ホーミング（SARH）誘導方式が主流でした。しかし、最新のBVRミサイルでは、SARHに加えアクティブ・レーダー・ホーミング（ARH）誘導方式を併用するものが一般的です。

最初のBVRミサイルはビームライディング方式でしたが、すぐにSARH誘導方式に置き換えられました。SARH誘導では、発射母機のレーダーで目標を照射し続け、ミサイルは反射波を追尾します。この方式では、目標に命中するまでレーダー照射が必要となります。

アクティブレーダー追尾装置を搭載した最初の空対空ミサイルは、1972年にF-14トムキャットに搭載されたAIM-54フェニックスです。これにより、発射後のレーダー照射が不要となり、発射母機の生存性が向上しました。AIM-54とF-14のAN/AWG-9|AN_AWG-9レーダーは、複数の目標を同時に追尾・攻撃することができ、1991年にAIM-120 AMRAAMが導入されるまで唯一の存在でした。

打ち放し式ミサイルの登場

現在では、AIM-120 AMRAAMやR-77のように、慣性誘導システム（INS）とデータリンクを組み合わせ、最終段階でARH誘導に切り替える「打ち放し式」ミサイルが主流です。これにより、ミサイル発射後は発射母機による目標のレーダー照射が不要となり、発射母機の離脱や別目標への攻撃が可能になりました。

また、一部のミサイルでは、初期誘導にSARH、最終段階に赤外線誘導を使用する方式も採用されています。この方式は、アクティブ誘導を必要とする時間を短縮しつつ、チャフなどによる妨害にも強いという利点があります。

BVRミサイルの効果と課題

BVRミサイルの効果については、湾岸戦争などの実戦例でも議論があります。戦果には、早期警戒管制機や敵の識別能力、敵のミサイル対策能力など、様々な要素が影響します。また、敵味方識別装置（IFF）の信頼性も、BVR戦闘における課題として指摘されています。

近年の動向

近年では、中国軍が開発したPL-15の登場を契機に、アメリカ合衆国でも新型長距離空対空ミサイルの開発が加速しています。

開発中の主なミサイル

AIM-174B: SM-6艦対空ミサイルを転用した空対空ミサイル。射程240km以上、アクティブレーダーホーミングで、対艦・対地攻撃能力も有する。
AIM-260: AMRAAMと同程度の大きさで、射程200km以上の長距離ミサイル。マッハ5、アクティブレーダーホーミング。
Long-Range Engagement Weapon: レイセオン社が開発中の新型ミサイル。詳細は未公開。

これらの新型ミサイルの開発により、BVRミサイルの性能はさらに向上し、今後の空戦に大きな影響を与えると考えられます。

参考文献

青木謙知「戦闘機解体新書(3)誘導方式から射程、戦術まで 空中戦の革命!視程外射程ミサイル」『軍事研究』第47巻、第1号、ジャパン・ミリタリー・レビュー、106-117頁、2012年1月。 NAID 40019082503。

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