覚醒時せん妄

覚醒時せん妄について

覚醒時せん妄（Emergence delirium）は、全身麻酔から覚醒する際に現れる精神的および運動的な興奮状態を指します。この症状は特に小児や高齢者に多く見られ、患者の状態や手術の内容に応じてさまざまな状況で発生することがあります。この現象は全身麻酔が関与しており、覚醒に伴う一時的な異常行動を含みます。以下では、覚醒時せん妄の定義、その発生のメカニズム、および小児や高齢者における特性について詳しく解説します。

覚醒時せん妄のメカニズム

覚醒時せん妄は、麻酔からスムーズに覚醒できない場合に生じます。通常、麻酔から覚めた後、意識の明瞭な期間がなく、持続時間は約30分とされています。これが術後せん妄とは異なる点で、術後せん妄は意識清明な期間が設けられることがあります。

小児における覚醒時せん妄

小児では、覚醒時せん妄が特に顕著です。この状態の重症度を評価するために使用される評価基準として、Pediatric Anesthetic Emergence Delirium（PAED）スケールやCornell Assessment of Pediatric Deliriumがあります。これらの基準をもとに、小児患者は麻酔から覚醒後30分以内にせん妄が発生し、通常は5〜15分で自然に回復します。

研究によれば、デスフルランおよびイソフルランの使用に基づく麻酔後の覚醒時せん妄の発生率は同様であることが確認されています。また、幼い子供が麻酔後に不安を感じる可能性があることから、急速な覚醒が逆にこの不安を助長する要因となると考えられています。

高齢者における覚醒時せん妄

高齢者の場合、覚醒時せん妄は手術後の認知障害や意識障害と関連しており、術後数日から数週間にわたり続くことがあります。このような認知の問題は、計画力や集中力、記憶力、日常生活の質に影響を与える可能性があり、特に注意が必要です。

非心臓手術を受けた高齢者の場合、術後せん妄は1ヶ月後に認知機能に影響を及ぼすことが確認されており、長期的な影響が懸念されています。最近の研究でも、70歳以上の成人における長期的な認知機能の低下や認知症の発生率が覚醒時せん妄と関連していることが示されました。

発生率と疫学

覚醒時せん妄の全体的な発生率は約5.3％で、小児患者では12～13％と高い頻度で見られます。文献によると、異なる吸入麻酔薬を用いた際の小児における発生率は2～55％と報告されています。ただし、これらのデータをもとにせん妄の診断を行う際には、痛みや恐怖による興奮と区別するための特別なツールが必要です。

たとえば、麻酔後回復室で実施された研究では、覚醒時せん妄の発生率は成人のPACU入室時に31％であったものの、1時間後にはその割合が8％に減少していました。このように、時間とともに自然に回復する傾向が見られることが多いです。

まとめ

全体として、覚醒時せん妄は麻酔からの覚醒を伴う状態であり、特に小児や高齢者において注意が必要です。そのメカニズムや影響は多岐にわたりますが、さらなる研究が求められています。今後の研究において、効果的な介入方法や予防策を確立することが期待されています。

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