デスフルラン

デスフルランについて

デスフルラン（1,2,2,2-テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル）は、全身麻酔の維持に用いられるハロゲン化エーテルの一つです。この薬剤は、ハロタンやエンフルラン、イソフルランと同じく、二つの光学異性体からなるラセミ混合物であり、（R）体と（S）体から成り立っています。

用途と特性

デスフルランは、その低い血液溶解性によって、麻酔の効果発現や消失が非常に迅速であり、全身麻酔を施す際の揮発性麻酔薬の中では最も効率的だとされています。現在、デスフルランはセボフルランとともに、次第にイソフルランの使用を代替していますが、特に発展途上国においては高額なため、なかなか広まっていないのが現状です。商品の名はスープレンで、吸入麻酔薬としての識別のために、青色のカラーコードが付与されています。

利点と欠点

デスフルランは、効果が発現するスピードが速い一方で、いくつかの欠点もあります。例えば、力価が低く、刺激性が強いことが挙げられます。また、10%を超える濃度での投与は頻脈や気道の過敏症を引き起こす恐れがあるため、主に緩徐導入には使用されません。デスフルランを使用する麻酔器は、薬剤を適正温度に保つための特殊な気化器を使用し、外部条件の変動を最小限に抑える工夫がされています。

環境への影響

デスフルランは地球温暖化に対しても影響を及ぼす温室効果ガスです。そのGWP（地球温暖化係数）は3714と非常に高く、これは1トンのデスフルランが大気中の3714トンの二酸化炭素に相当します。このため、麻酔薬の選定においてその環境への影響も考慮されるようになっています。

デスフルランはエンフルランやイソフルランと同様に、麻酔回路内の二酸化炭素吸収剤と反応することにより、一酸化炭素を生成する可能性があります。この生成は、特に吸収剤が乾燥した状態で顕著であり、環境への影響をさらに増す要因となっていることが研究で明らかになっています。

薬理学的な側面

デスフルランは、GABAA受容体やグリシン受容体に対して陽性アロステリックモジュレーターとして作用し、ニコチン性アセチルコリン受容体については陰性アロステリックモジュレーターとしての役割を果たしています。これにより、全身麻酔の効果が増幅され、患者の意識を低下させます。

まとめ

デスフルランは、全身麻酔において迅速な効果が期待される薬剤ですが、高い力価や刺激性、コストの面での課題を抱えています。また、その地球温暖化への影響は無視できないため、医療現場では麻酔薬選定時にその環境への配慮も求められるようになってきています。今後も新たな代替薬の開発が期待される分野です。

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