観世四郎

観世四郎について

観世四郎（かんぜ しろう、生没年不詳）は、室町時代前期に活動した猿楽師であり、四郎大夫とも称されます。彼は観阿弥の息子で、世阿弥の弟にあたりますが、具体的な生涯については記録が少なく、彼の活動内容には議論が存在します。

四郎の役割と活躍

四郎が観世座に所属していたことは確かですが、彼の演技力については意見が分かれています。伝えられる記録によると、彼は「ほとんど見るべきもののない」平凡な役者だったとも言われますが、近年では彼が兄・世阿弥の補佐役として相当な影響力を持っていたのではないかとも考えられるようになりました。特に、1420年には『風姿花伝』に関する伝授を受けたとされ、これにより彼が一定の技術と実力を持っていたことが示されています。

観世座における彼の役割は「脇之為手」、いわば「准大夫」とも表現され、兄を支える重要な位置にいたとされます。このことから彼が演者として相当の活躍を行っていた可能性は否めません。四郎は自身も猿楽の重要な節目であった醍醐寺清滝宮での公演に参加し、その活動が古い記録にも残されています。

家族とその影響

1398年、四郎は息子の三郎元重（後に音阿弥と呼ばれる）をもうけ、その後に弟の弥三郎（蓮阿弥）も生まれます。彼の子供たちも後に観世家の演者として重要な役割を果たし、文化の次世代に引き継ぐ存在となっていきました。特に音阿弥元重は足利義教に重用され、観世座の中心的役割を果たしました。

世阿弥には当初子供がいなかったため、元重が養子として迎え入れられましたが、後に世阿弥に実子が生まれ、元雅に座の棟梁の地位が譲られました。これにより四郎の家も観世家の重要な一部として位置付けられ、その子孫は長きにわたって観世流の家系を受け継ぐこととなります。

四郎の死後の影響

四郎が亡くなった後の記録は残されておらず、正確な死去の年は不明ですが、彼の影響はその後も続きました。音阿弥元重は彼の息子として観世家の主要な役者として活躍し、その子孫により観世家は現在まで続いています。また、四郎の名を襲名した役者たちも存在し、舞台業界において重要な地位を占めていました。このように、四郎は現在でも観世宗家の直系の祖として重要視されています。

四郎にまつわる文芸作品

杉本苑子の小説『華の碑文』では、四郎を主人公とし、彼の心の内が描かれています。作中では四郎は幼名を竹若、成長後は元仲として描かれており、兄・世阿弥への思慕を抱きながら、能の芸術を追求する姿勢が際立っています。

四郎の名前は、時代を超えて多くの弟子に受け継がれ、その存在が猿楽のみならず、日本文化全体においても重要であったことがわかります。彼の活動と子孫たちの貢献により、観世流は今なお受け継がれ、多くの人々に影響を与え続けています。

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