音阿弥

音阿弥とは

音阿弥（おんあみ、またはおんなみ）は、応永5年（1398年）から文正2年1月2日（1467年2月6日）まで生きた室町時代の猿楽能役者です。彼は観世三郎元重という名でも知られ、観阿弥の孫であり、世阿弥の甥でもあります。また、彼は三世観世大夫としての地位を持ち、猿楽能の発展に大きく寄与しました。

音阿弥の活動と地位

音阿弥の活動は、足利義教の強力な支持を受けて展開され、彼は約70年の生涯を通じて能楽界の第一人者として活躍しました。世阿弥の女婿である金春禅竹らと共に、猿楽能が当時の芸能界の主流となる道を切り開きました。彼は祖父観阿弥、伯父世阿弥によって築かれた観世流を発展させ、優れた演技力が評価され、連歌師の心敬からは「今の世の最一の上手」と称賛されるほどでした。

生涯の概況

音阿弥の父は世阿弥の弟である四郎ですが、その詳細な経歴は定かではありません。ただし、音阿弥は世阿弥から著書『風姿花伝』を受け継いでいたことがわかっており、観世座の脇之仕手としても活躍していたと考えられています。彼の少年期については明らかではありませんが、通称「三郎」は祖父や伯父も使用しており、彼が幼くして世阿弥の養嗣子になっていた可能性があります。

音阿弥は、応永20年代からその活動が確認されており、観世座の次世代の担い手として成長していきます。しかし、応永29年（1422年）には観世大夫の地位をいとこである元雅に譲ることになります。

御用役者としての音阿弥

その後、世阿弥父子は次第に将軍家からの支持を失う一方で、音阿弥は青蓮院門跡義円の支援を受け成功を収めました。正長2年（1429年）には、義円が還俗して将軍・足利義教となり、音阿弥はその熱心な支持を受けることになります。この結果、音阿弥は観世座の独立性を強め、ついには主導権を掌握するに至ります。

音阿弥の大夫就任披露のための勧進猿楽は、京の糺河原で行われ、将軍家の御用役者として高く評価されていました。彼の能は、将軍をもてなす席において必須とされるほどとなります。しかし、嘉吉元年（1441年）には義教の暗殺事件に巻き込まれることとなり、一時的に困難な時期を迎えます。

晩年と影響

約60歳を迎える長禄2年（1458年）頃には、子の又三郎正盛に大夫の座を譲った後、出家し法名「音阿弥」を名乗りました。彼はその後も第一線で活動を続け、数々の能を舞い続けました。しかしながら、政情不安からの影響は大きく、生活は楽ではなかったようです。1467年に音阿弥は死去しましたが、彼の子孫たちは以後も観世大夫の職を受け継いでいます。

彼の後世への影響

音阿弥の時代には観世座と幕府権力との結びつきが強化され、それ以降の能楽界において観世流が中心的な役割を果たすこととなりました。音阿弥が残した作品は多くはありませんが、役者としての活躍は後世に名を遺す結果となりました。彼の子孫が能作者としても活躍し、直接的な影響が広がったことも見逃せません。音阿弥の功績は、現在に至るまで観世流の発展と名優の系譜に多大な貢献をしていったのです。

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