観光文化学部

観光文化学部とは

観光文化学部は、過去に日本の大学に置かれていた特徴的な学部です。この学部は、観光という現象を単に経済活動やレジャー産業の一部として捉えるのではなく、文化や社会、歴史、地域との関わりといった幅広い視点から深く探求し、その教育と研究を通じて、より豊かな観光のあり方を創造できる人材を育成することを目的としていました。

設置の背景と目的

2007年の観光立国推進基本法の施行など、国を挙げて観光を基幹産業の一つとして振興しようとする動きが活発化する中で、観光学という学問分野への注目が高まりました。しかし、求められたのは単なる実務的な知識だけでなく、変化する社会や多様な文化に対応できる応用力と深い教養を備えた人材でした。観光文化学部は、このような時代の要請に応える形で設立され、観光を多角的に理解し、国際社会でも通用する専門的な能力を持った「観光産業等の担い手」を育成することに重点を置いていました。

教育プログラムの特色

観光文化学部で提供されていた教育プログラムは、学際性が高いことが特徴でした。学生は、観光事業の経営や運営に関する基礎知識を学ぶ「経営学」はもちろん、観光が地域社会や政策に与える影響を理解するための「政策学」や「地域研究」といった社会科学系の科目を履修しました。さらに、国際交流が不可欠な観光分野において、多様な背景を持つ人々と円滑にコミュニケーションを図るため、「外国語」教育にも非常に力が入れられていました。単に語学スキルを磨くだけでなく、異文化に対する深い理解と尊重の精神を養うことが重視され、グローバルな視点を持った人材育成が進められました。

目指す人材像

この学部が育成を目指したのは、単に旅行業界や宿泊施設で働くオペレーションレベルの人材ではありませんでした。観光を通じて地域の文化や魅力を発掘し、それを国内外に効果的に発信する能力、持続可能な観光のあり方を企画・提案し、地域社会の活性化に貢献できる能力を持った、より創造的でリーダーシップのある人材です。文化と観光を結びつけることで、地域固有の価値を高め、国内外からの訪問者に対して質の高い体験を提供できる専門家の育成が期待されていました。

設置大学と現在の状況

観光文化学部を設置していた大学としては、神奈川県にある松蔭大学と、かつて兵庫県にあった神戸夙川学院大学があります。松蔭大学では、その後の学部改組を経て、現在は観光メディア文化学部として、観光に関連する教育研究を引き続き行っています。一方、神戸夙川学院大学は、残念ながら大学自体が廃止されています。このことから、観光文化学部という名称の学部は現在では限定的になったものの、そこで培われた教育理念や研究内容は、他の学部や学科に形を変えて引き継がれているケースが多いと言えます。

関連分野

観光文化学部と同様に、観光を専門とする学部としては「観光学部」が広く知られています。また、国際的な視点や文化に焦点を当てる学部として「国際文化学部」や「国際観光学部」などもあり、これらの学部も観光文化学部と共通する教育・研究領域を有しています。観光学は、人文科学、社会科学、経済学など、様々な分野が複合的に関わる学際的な領域であり、観光文化学部はその中でも特に文化的な側面を重視したアプローチを展開していました。

まとめ

観光文化学部は、観光を単なる経済活動ではなく、文化という視点から深く理解し、その多角的な教育研究を通じて、変化する社会に対応できる専門性と教養を備えた人材を育成しようとした先駆的な試みでした。その教育理念は、現代の観光関連学部や地域創生に関わる学問分野にも影響を与えていると言えるでしょう。

もう一度検索