角屋

角屋（すみや）：島原花街の面影を今に伝える、歴史と文化の博物館

角屋は、かつて京都の島原花街で隆盛を誇った揚屋（料亭・饗宴施設）であり、その建物は国の重要文化財に指定されています。現在は「角屋もてなしの文化美術館」として一般公開され、江戸時代の華やかな文化を今に伝えています。

角屋の歴史

角屋の歴史は、天正17年（1589年）に豊臣秀吉によって開かれた傾城町「柳町」に初代徳右衛門が創業したことに始まります。その後、慶長7年（1602年）と寛永18年（1641年）の二度の移転を経て、現在の島原の地へと落ち着きました。明治5年（1872年）まで揚屋として営業を続け、その後はお茶屋に編入。昭和60年（1985年）まで宴会場として利用されていました。

昭和27年（1952年）には、島原で唯一現存する揚屋の遺構として国の重要文化財に指定。平成10年（1998年）には「角屋もてなしの文化美術館」が開館し、一般公開されるようになりました。

角屋の見どころ

角屋の建物は、江戸時代初期の建築様式を今に伝える貴重な遺構です。特に、以下の点が見どころとなっています。

表棟と奥棟: 格子造りの表棟と、中庭を挟んで建つ奥棟からなり、揚屋建築の特徴的な構造を見ることができます。
各部屋の意匠: 「緞子の間」「翠簾の間」「扇の間」「青貝の間」「檜垣の間」など、各部屋ごとに趣向を凝らした装飾が施されており、当時の文化水準の高さをうかがい知ることができます。
襖絵: 与謝蕪村の「紅白梅図」をはじめ、円山応挙、石田幽汀など、著名な絵師による襖絵が数多く残されており、美術的価値も非常に高いです。
芹沢鴨の刀傷: 幕末には新選組も角屋を訪れており、芹沢鴨が暴れた際にできた刀傷が今も残されています。

角屋と文化人

角屋は、江戸時代から多くの文化人に愛されてきました。俳諧が盛んだった時代には、与謝蕪村が角屋の当主（七代目、俳名徳屋）に招かれ、数々の作品を残しています。また、幕末には久坂玄瑞、西郷隆盛などの勤王の志士が密議を交わし、新選組も遊興に訪れるなど、歴史の舞台ともなりました。

現在の角屋

現在は、公益財団法人角屋保存会によって維持・管理されており、「角屋もてなしの文化美術館」として一般公開されています。1階部分のみが公開されており、2階座敷の見学には事前予約が必要です。所蔵品は約1万1千点にのぼり、江戸時代の文化や歴史を今に伝える貴重な資料となっています。

隣接する山陰本線の高架部分の騒音問題は、JR西日本との間で長らく係争されていましたが、平成20年（2008年）に対策を講じることで和解が成立しました。

角屋は、単なる歴史的建造物としてだけでなく、江戸時代の文化や芸術、そして人々の息吹を感じることができる貴重な場所です。京都を訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

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