角田秀松

角田秀松：会津藩から海軍中将への軌跡

角田秀松は、1850年、会津藩医の家に生まれました。幼少期には、父の赴任に伴い蝦夷地で過ごした経験や、様々な師事を通して幅広い知識と経験を積みました。戊辰戦争では、会津藩士として激戦を経験しますが、藩の降伏後、水夫として航海術を磨きます。

転機は、征台役に運送船で従軍した際に西郷従道の知遇を得たことです。1874年、長崎海軍出張所に雇われ、海軍への道を歩み始めます。江華島事件では、陸戦隊を率いて上陸し、砲台を占領する武功を挙げ、海軍少尉に任官しました。

その後、西南戦争に従軍し、日本艦船初のヨーロッパ巡航にも参加するなど、着実にキャリアを積んでいきます。様々な艦艇の乗組員や、水雷練習所、水雷局といった要職を歴任し、その高い能力を認められます。日清戦争前には、軍令部第1局長に就任。これは、作戦立案の中枢を担う重要なポストであり、戦争における彼の役割の大きさを物語っています。日清戦争中は、大本営幕僚として戦争を指揮し、その手腕を発揮しました。

日清戦争後、台湾総督府海軍局長に就任し、海軍少将に昇進。その後も、台湾総督府において様々な要職を歴任し、海軍中将にまで上り詰めました。1900年、海軍中将に昇進すると、艦政本部長、将官会議議員を歴任し、常備艦隊司令長官に就任しました。これは、薩摩、長州、佐賀藩出身者しか就任していなかった重要なポストであり、会津藩出身者として初の就任は、大きな意味を持ちます。

日露戦争では、竹敷要港部司令官を務め、日本の勝利に貢献しました。しかしながら、1905年12月、戦病により亡くなりました。その功績を認められ、1907年、遺族に男爵位が贈られています。

角田秀松の生涯は、戊辰戦争で「朝敵」とされた会津藩出身者として、海軍という新たな道を切り開き、頂点まで上り詰めた物語です。薩長藩出身者中心だった海軍において、会津藩出身者として初めて常備艦隊司令長官に就任したという事実は、彼の卓越した能力と努力、そして時代を超えた彼の存在感を示しています。当初は薩長藩への敵愾心を持っていたとされる角田ですが、その心境の変化を示す逸話も伝えられています。彼の経験と生き様は、日本の近代化を担った海軍の歩み、そして時代を超えた和解の可能性を示唆するものでもあります。

参考文献

会津会会報第12号、1918年
「第8号 戦時大本管海軍々人軍属官職姓名表」 アジア歴史資料センター Ref.C08040569800
伊藤正徳 (軍事評論家)『大海軍を想う』文藝春秋新社、1956年
外山操編『陸海軍将官人事総覧 海軍篇』芙蓉書房出版、1981年
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年
福川秀樹『日本海軍将官辞典』芙蓉書房出版、2000年
松野良寅『海は白髪なれど』博文館新社、1992年
『立身致富信用公録 第13編』国鏡社、1903年

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