記録長官

記録長官の役職について

記録長官（きろくちょうかん）、英語ではMaster of the Rollsとは、イングランドおよびウェールズにおける控訴院民事部の主席の地位を持つ重要な職務です。この役職は、イングランドおよびウェールズの裁判官の中では、首席裁判官に次ぐ第二の序列を誇っています。現在の記録長官はサー・ジェフェリー・ヴォスで、2021年1月11日にその職に就任しました。

記録長官の起源

記録長官の職務は、少なくともエドワード1世の治世が始まった1286年までには成立しており、もっと古い時代にもその源流があると考えられています。この役職は当初、大法官府裁判所の記録を管理する書記としての役割であり、その記録が「ロール」と呼ばれる巻物に記載されていました。そのため、当初、役職名はKeeper of the Rolls of Chancery（大法官府の巻物管理者）とされていました。

大法官府には複数の書記が在籍し、その中で首席となる者が記録長官の役割を果たしていたことから、国璽尚書を代わりに担うこともありました。また、1290年にイングランドからユダヤ人が追放された際に、元ユダヤ教徒改宗教会の監事を兼務するようになり、これにより「ロールズ・オフィス」や「ロールズ・チャペル」として知られる場所が設立されました。法曹界の中心地としてこの地所は発展し、ロールズ・エステートも法曹院の一部として機能するようになりました。

1838年になると、大法官府の記録管理が政府全体に拡大し、パブリック・レコード・オフィスが誕生しました。このような経緯から、記録長官は英国記録協会の会長も任命され、21世紀の現在に至るまでその役割が流れています。

職務内容の変遷

記録長官の役割は時代と共に変化しており、特に裁判官としての責務が求められるようになったのは大法官府裁判所の整備とともに起こりました。1433年には、大法官が不在の際に裁判官の職務を代行する事例が見られ、1520年にはその職務の重要性が言及されました。16世紀のしばらくの間、記録長官は法律に対する知識を持たない人物も就任できる閑職として扱われることもありましたが、17世紀になるとその地位の向上が見られ、1623年に大法官の副官としての地位を確立しました。1729年には記録長官が正式に大法官府裁判所の一員として認められ、1833年にはさらなる格上げがあり、それまでの大法官との序列の違いが解消されました。19世紀半ばに至っては、記録長官は実質的に大法官府裁判所の首席裁判官としての役割を担うようになりました。

1873年には裁判所法の改正が行われ、大法官府裁判所は他の裁判所と統合されて高等法院に組み込まれました。これにより記録長官は高等法院大法官府部及び控訴院に属することになりましたが、1881年にはさらなる改正により控訴院専任となり、今日に至るまでその地位は維持されています。

現代における役割

現在、記録長官は控訴院の裁判官の一人であり、控訴院民事部の部長としての責任も負っています。この役職は歴史的に重要な意味を持ち、その業務は裁判所の運営に欠かせないものとなっています。記録長官の存在は、イングランドおよびウェールズの司法制度にとって不可欠であり、その職務は今後も続いてくことでしょう。

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