法曹院

法曹院 (Inns of Court) の概要

法曹院とは、イギリス・ロンドンに位置する非営利の弁護士組織で、正式には「Inns of Court」と呼ばれます。この機関は、法廷弁護士の教育と資格認定、職業訓練を行う重要な役割を果たしています。法曹院はリンカーン法曹院、ミドル・テンプル法曹院、グレイ法曹院、インナー・テンプル法曹院の4つから成り立ち、各院は評議員（Bencher）の管理の下で運営されています。

歴史的な背景

法曹院の起源は不透明であり、中世のコモン・ローの発展と共に自然発生的に形成されたと考えられています。イングランドに封建制度が確立された際、土地の価値が変化し、法的な取引が活発になるにつれて、法曹の教育機関が必要となったのです。法曹院の名称が初めて用いられたのは15世紀頃で、以後、法人としての形を整え、弁護士教育に特化しました。

16世紀には、法曹院での入学者数が大幅に増加し、教育システムが確立されましたが、当時は奨学金が存在せず、主に貴族やジェントリ階級の出身者が入学する傾向がありました。法曹院はその教育の高さから「イングランド第3の大学」とも称され、オックスフォード大学やケンブリッジ大学と並ぶ存在となりました。

現在の構造

今日の法曹院は、法廷弁護士を目指す学生、実務家の法廷弁護士、そして院の運営を担う評議員という、3つの主要な会員区分から成っています。法廷弁護士は法曹院とは基本的にあまり関わりがありませんが、法曹院は弁護士への弾劾裁判を行う権利を持っています。評議員は、その院の最高位のメンバーであり、特別な地位を持つ王室顧問弁護士や裁判官から選出されることが一般的です。

会員資格と支援制度

法曹院は、法廷弁護士資格を取得するための重要なステップとして、学生に対して補助的な教育を提供しています。また、奨学金制度が充実しており、毎年合計で約400万ポンドの奨学金が提供されています。この額は法曹院の財政状態によって異なりますが、学生にとって選択の重要なポイントとなっています。法律を学ぶ学生は、法曹院で人脈を築き、定期的に開かれる正式なディナーなどを通じて法曹界特有のエチケットを学ぶ機会が得られます。

アクセスと利用

法曹院はロンドンの王立裁判所の近くに位置し、特徴的な庭園やチャペルは一般に無料で開放されています。特に夏季には、シェイクスピアの劇が上演されたり、様々なイベントが開催されることもあります。これらの施設は、企業のイベントや研修の場としても利用されており、法曹界だけでなく、広く一般にも利用されています。

結論

法曹院は、イギリスにおける法廷弁護士の育成において重要な役割を果たしてきた歴史ある教育機関であり、現在でも多くの学生や実務家にとって欠かせない存在となっています。4つの法曹院は平等に設立されており、それぞれに独自の伝統と役割を持ちながら、弁護士資格取得を目指す学生にとっての学びの場を提供し続けています。

もう一度検索