許されざる者 (1960年の映画)

許されざる者：家族の絆と過去の影が交錯する西部劇

1960年、ジョン・ヒューストン監督、バート・ランカスターとオードリー・ヘプバーンという豪華キャストを迎え、公開された西部劇映画『許されざる者』。テキサスの広大な牧場で暮らすザカリー一家は、一見穏やかな日々を送っているように見えますが、その内面には、過去からの暗い影が忍び寄っていました。

ザカリー家の長男ベンは、亡き父の後を継ぎ、牧場経営を成功させています。母親のマティルダ、次男のキャッシュ、三男のアンディ、そして養女のレイチェルと、5人で慎ましく暮らしています。近隣の牧場主ゼブ・ローリンズはベンを信頼し、一家を厚遇しており、レイチェルを自身の息子チャーリーとの結婚相手にと考えていました。レイチェル自身は、ベンに秘めた想いを抱いていました。

しかし、平穏な日々は長く続きません。怪しい老齢のエイブ・ケルシーが現れ、「レイチェルにはインディアンの血が流れている」という噂を広めます。この噂は、ザカリー一家に暗い影を落とします。

さらに、カイオワ族の首領ロスト・バードがザカリー家を訪問し、幼い頃に失われた妹を返すよう迫ります。ベンは、レイチェルを妹だと認めず、要求を拒否します。しかし、その後、チャーリーがカイオワ族に殺害されるという悲劇が起こります。

この事件をきっかけに、ザカリー一家はゼブからも見放され、孤立していきます。ベンは、災いの元凶であるケルシーを捕らえ、尋問します。ケルシーは、驚くべき過去を告白します。かつて、ケルシーはベンの父親ウィルとパートナーでした。ウィルは、インディアンに襲われた移民の赤ん坊を救ったと偽り、実際にはカイオワ族の赤ん坊を盗んだのです。その復讐として、ケルシーの息子が殺害され、ケルシーはザカリー一家への復讐を誓っていたのです。

ケルシーは処刑され、ザカリー一家はさらに深い悲しみに沈みます。レイチェルの血筋をめぐり、兄弟たちは分裂し、キャッシュは家を出ます。レイチェルは、家族のためにカイオワ族に身を投じようとするも、ベンの深い愛情に支えられ、家族とともに戦うことを決意します。

しかし、カイオワ族の襲撃は容赦なく襲いかかります。激しい銃撃戦の末、母親のマティルダは命を落とします。絶体絶命の状況下で、ベンは捨て身の作戦に出ます。キャッシュも戻り、協力してカイオワ族を撃退しますが、ロスト・バードはレイチェルに迫ります。レイチェルは、自らの手でロスト・バードを殺害します。

苦難を乗り越えたザカリー一家は、再び結束を固め、過去と決別します。この映画は、家族の愛と葛藤、復讐の連鎖、そして人種差別といった重いテーマを、西部劇という枠組みの中で深く掘り下げています。

オードリー・ヘプバーンと撮影秘話

オードリー・ヘプバーンは、撮影中の落馬事故で脊椎を骨折し、入院する事態に見舞われました。それでも、コルセットを着けて撮影に復帰した彼女のプロ意識は、並々ならぬものでした。また、ヘプバーンは当時妊娠していたものの、撮影終了後に流産するという不幸な出来事も経験しています。彼女の専任介護にあたったのは、『尼僧物語』でヘプバーンが演じたシスター・ルークのモデルとなった人物でした。

監督ジョン・ヒューストンの見解

監督のジョン・ヒューストンは、この作品について複雑な思いを抱いていたようです。彼は、人種的不寛容と社会のモラルを批判したかったものの、制作側は、大活劇映画を求めていたといいます。自伝では、「自分の作品で嫌いなのは『許されざる者』だけだ」とまで述べています。

日本での評価

日本では、この作品は高い評価を受け、大ヒットを記録しました。映画評論家双葉十三郎も、この作品を高く評価しています。

ヘプバーンの次の作品

ヘプバーンは、この作品の後、アルフレッド・ヒッチコック監督の作品への出演をオファーされましたが、レイプシーンがあったため断っています。

『許されざる者』は、豪華なキャスト、重厚なストーリー、そして撮影秘話など、多くの魅力を持つ西部劇映画です。オードリー・ヘプバーンとバート・ランカスターの共演、ジョン・ヒューストンの監督、そして復讐と家族の絆、人種問題といった複雑なテーマが絡み合い、観る者を惹きつけます。

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