許斐氏利

許斐氏利：激動の生涯

許斐氏利（このみ うじとし）は、1912年12月16日に福岡で生まれ、1980年3月5日に胃癌で亡くなった人物です。クレー射撃選手としてオリンピックに出場する一方、右翼活動家、特殊株主、興行師としても名を馳せました。その生涯は、まさに激動の一言に尽きます。

生い立ちと武道への道

福岡市で金融業を営む家庭に生まれた許斐は、幼少期から柔道に打ち込みました。1931年に上京し講道館に入門、中学生にして柔道四段を授与されるほどの腕前でした。しかし、素行不良が原因で五段への昇段を拒否され、暴行事件を起こして学校を転々とするなど、武道家としての道を歩むことは叶いませんでした。

右翼活動と特務機関員時代

明治大学在学中は右翼学生団体「愛国学生連盟」に参加し、1933年には政友会の議員襲撃事件に関与。逮捕されるも、不起訴となり釈放されました。この事件がきっかけで講道館を破門され、武道家への道を諦めることになります。その後、政治結社「大化会」に入会し、北一輝の書生となります。二・二六事件では北一輝や西田税を護衛するも、事件後は憲兵の尾行を受けるようになり、中国大陸へ渡ります。中国では、関東軍直属の特務機関員として活動、後に自ら「許斐機関」を組織し、上海やハノイで地下活動に従事しました。この頃、阿片を使った工作活動にも関与していたとされています。

戦後の混乱と実業家への転身

終戦間際には日本へ帰国。戦後は米軍専用のキャバレーやナイトクラブを開業しました。しかし、軍需物資の不正入手や恐喝などの容疑で逮捕され、有罪判決を受けます。その後、東京に進出し、銀座に「東京温泉」を開業。マッサージ嬢を配したこの施設は、日本におけるトルコ風呂の元祖となりました。実業家として成功を収める一方、特殊株主としても活動し、企業の紛争解決にも関わりました。

オリンピック選手、そしてサウナ王

射撃選手としての顔も持ち、1956年のメルボルンオリンピックではクレー射撃種目に出場。1958年にはアジア競技大会で金メダルを獲得しました。また、日本に初めてサウナを持ち込んだ人物としても知られています。メルボルンオリンピックでフィンランド選手が持ち込んだスチームサウナにヒントを得て、サウナを普及させたことから「サウナ王」とも呼ばれました。

波乱に満ちた晩年

1978年に東京温泉の社長を退任。1980年に胃癌で亡くなりました。その生涯は、右翼活動、戦争、裏社会、そして実業家として成功を収めるなど、波乱に満ちたものでした。自宅には、アフリカで自らハントした動物の剥製が飾られ、その異質な経歴を物語っていました。また、麻雀卓や漫画が置かれていたことから、多趣味な一面も伺えます。

親族

孫にはラッパーのUZIがいます。UZIは、祖父である許斐氏利の過去について詳しいことは知らされていなかったと述べています。

許斐氏利の遺産

許斐氏利は、その波乱万丈な生涯を通じて、数多くの伝説と逸話を残しました。その生き様は、多くの人々に語り継がれています。

まとめ

許斐氏利は、武道家、右翼活動家、特務機関員、実業家、射撃選手、特殊株主と、様々な顔を持つ異色の人物でした。その生涯は、激動の昭和史を象徴するかのようです。彼の残した功績や逸話は、今もなお多くの人々の興味を惹きつけています。

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