許皇后 (漢成帝)

許皇后（きょこうごう）：悲劇の皇后、その生涯

許皇后は、前漢の成帝の皇后として知られています。彼女は、宣帝の皇后であり、元帝の母である許平君の従兄弟の娘にあたります。ここでは、彼女の生涯を詳細に解説します。

生い立ちと皇太子妃時代

許皇后は、大司馬車騎将軍の許嘉の娘として生まれました。許嘉は、許平君の父である許広漢の弟、許延寿の子にあたります。彼女には兄弟に許況がいました。

元帝は、母である許平君が皇后に立てられてすぐに殺害されたことを深く悼んでいました。そのため、許嘉の娘である彼女を皇太子（後の成帝）の妃に選びました。皇太子妃となってしばらくして、彼女は男子を産みますが、残念ながら早世してしまいます。

皇后として

皇太子が即位すると、許氏は皇后に立てられます。しかし、その後生まれた女子もまた早世してしまいます。許皇后の父である許嘉は、元帝の時代から大司馬車騎将軍を務めていましたが、成帝は母である王政君の兄弟、大司馬大将軍の王鳳に政治を委ねることを決め、許嘉を罷免しました。

許皇后は聡明で史書に通じており、皇太子妃の時代から皇后となってからも、常に成帝に寵愛されていました。後宮では他の女性にお召しがかかることが稀なほどでした。しかし、皇太后や成帝の外戚たちは、成帝に後継ぎがいないことを心配していました。当時、天変地異が頻発し、劉向や谷永は、その原因が後宮にあると述べました。成帝はこれに同意し、皇后の宮殿の費用を削減しました。許皇后は反対意見を上奏しましたが、成帝は劉向や谷永の進言を採用し、反論しました。

寵愛の衰退と廃位

鴻嘉3年（紀元前18年）には、日食などが起こり、その原因を大将軍の王鳳に求める者もいましたが、谷永などは許皇后が原因だと述べました。許皇后は、自分が王鳳に助けてもらえないことを悟り、次第に寵愛も衰えていきました。後宮には他に寵愛される女性も増えてきました。

そんな折、許皇后の姉で平安剛侯の夫人の許謁らが、王鳳や妊娠した後宮の女性を呪詛していたという事件が発覚します。許謁らは誅殺され、許皇后は廃位されることとなりました。

悲劇的な最期

その後、綏和元年（紀元前8年）に、成帝は許氏を憐れみ、事件の影響で故郷や領国に帰されていた許氏を都に呼び戻しました。しかし、その年に許皇后の姉である許孊が、王政君の血縁者である淳于長の妻となっており、そのつてで淳于長に婕妤に立てて欲しいと請託しました。淳于長は、「また左皇后に立てられるようにしてみましょう」と言って許皇后を欺き、贈り物を受け取っていました。このことが発覚し、成帝は廷尉の孔光に節を持たせて許皇后に毒薬を賜り、許皇后は自害しました。

許皇后の生涯は、宮廷内の権力闘争と、それに翻弄された悲劇的な物語として、後世に語り継がれています。


参考文献
* 班固著『漢書』巻10成帝紀、巻93淳于長伝、巻97下孝成許皇后伝

もう一度検索