孔光

孔光（こう こう）

孔光（紀元前65年 - 5年）は、前漢後期の政治家であり、儒学者です。字は子夏（し か）。孔子の14世の孫にあたります。彼は、経学に通じ、その学識と公正な人柄で、成帝、哀帝、平帝の三代にわたり重用されました。

生涯

孔光は、元帝の師であった孔覇（こう は）の末子として生まれました。幼い頃から経書に通じ、20歳になる前に議郎（ぎろう）に推挙されます。光禄勲（こうろくくん）の匡衡（きょう こう）は、孔光をその公正さから推挙し、諫大夫（かんたいふ）となりました。しかし、政治的な意見の相違から虹県長（こうけんちょう）に左遷され、辞職して故郷に戻り、経書を教える生活を送りました。

成帝の即位後、再び推挙され博士（はかせ）となり、各地の冤罪や風俗を視察する使者として派遣されました。彼は、流民への施しを行うなど、その任務を忠実に果たし、名声を高めました。その後、尚書（しょうしょ）となり、成帝からの信頼も厚く、尚書僕射（しょうしょぼくや）、尚書令（しょうしょれい）と昇進を重ねました。さらに、諸吏光禄大夫給事中（しょりこうろくたいふきゅうじちゅう）に昇進し、領尚書事（りょうしょうしょじ）を兼ねるようになります。後には、領尚書事、給事中を兼ねたまま、光禄勲となりました。

孔光は、皇帝の質問に対し、表面的な迎合をせず、常に経書に基づいた誠実な回答を心がけました。また、自分が他人を推挙したことを人に知られるのを避けるなど、謙虚な人柄でした。休暇中には、家族と政治の話を一切せず、朝廷内の情報を漏らすこともありませんでした。

永始2年（紀元前15年）には、翟方進（たく ほうしん）の後任として御史大夫（ぎょしだいふ）に昇進しました。成帝の後継者選びの際には、他の者が定陶王（ていとうおう）を支持する中、孔光は中山王（ちゅうざんおう）を支持しました。しかし、成帝は定陶王を選んだため、孔光は廷尉（ていい）に左遷されました。

廷尉に左遷されてからも、孔光は法令に明るく、公平な人物として評判となりました。淳于長（じゅんうちょう）の事件に連座して廉褒（れんぽう）・朱博（しゅはく）が罷免されると、その後任として左将軍（さしょうぐん）に任命されました。綏和2年（紀元前7年）には、丞相（じょうしょう）の翟方進が自殺したため、その後任として孔光が選ばれました。就任の準備が整い、印綬を授けられる直前に成帝が急死したため、その夜、成帝の遺体の前で丞相・博山侯（はくさんこう）の印綬を受け取りました。

皇太子であった定陶王が哀帝（あいてい）として即位すると、孔光は傅太后（ふたいこう）との対立から列侯を取り上げられ罷免されました。しかし、後任の丞相たちが相次いで失脚したため、哀帝は孔光の能力を認め、再び重用するようになります。

元寿元年（紀元前2年）には、日食などの災異を機に、孔光は再び光禄大夫、給事中に任じられます。その後、丞相に復帰し、博山侯に封じられました。元寿2年（紀元前1年）には、三公の官制改正により、大司徒（だいしと）に改称されました。

哀帝の死後、平帝（へいてい）が即位すると、王莽（おうもう）が政治の実権を握りました。王莽は、孔光が王太后（おうたいごう）から尊敬されていることを利用し、自分の意に沿わない人物を陥れるための上奏を行わせようとしました。王莽の権勢が増すにつれ、孔光は辞職を願い出ますが、王莽によって太傅（たいふ）に任命され、政治に関与せざるを得なくなります。元始元年（1年）には太師（たいし）に進められましたが、常に病気を理由に王莽と距離を置こうとしました。

元始5年（5年）、孔光は70歳で亡くなりました。その葬儀は王鳳（おうほう）と同等の格式で行われ、簡烈侯（かんれつこう）と諡（おくりな）されました。博山侯は、子の孔放（こうほう）が継ぎました。

孔光は、その学識と公正な人柄で、激動の時代を生き抜いた政治家でした。彼の誠実な態度は、多くの人々に感銘を与え、後世にまで語り継がれています。

参考文献

* （後漢）班固著（唐）顔師古注『漢書』巻19下 百官公卿表下、巻81 孔光伝

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