証書

証書（しょうしょ）とは

証書とは、権利、義務、または事実などを証明するために作成される書類や文書のことです。その種類は多岐にわたり、法的効力や証拠力もそれぞれ異なります。ここでは、証書の種類や特徴について詳しく解説します。

公正証書と私署証書

証書は、作成主体によって大きく「公正証書」と「私署証書」に分けられます。

広義の公正証書・公文書

公務所または公務員が職務上作成した文書を公文書といいます。そのうち、公務員が権限に基づいて作成した証書が広義の公正証書です。公正証書原本不実記載罪でいう「公正証書」はこれにあたります。

民事訴訟においては、文書の成立の真正、つまり文書が本物であることの証明が原則として求められます（民事訴訟法228条1項）。しかし、公務所が発行する文書については、虚偽公文書作成等罪などの犯罪が疑われる場合を除き、方式や趣旨から公務員が職務上作成したものと認められるときは、真正に成立した公文書と推定されます（民事訴訟法228条2項）。

狭義の公正証書

広義の公正証書のうち、公証人法等に基づき、公証人が私法上の契約や遺言などの権利義務に関する事実について作成した証書を狭義の公正証書といいます。一般に「公正証書」という場合、この狭義の公正証書を指すことが多いです。

金銭消費貸借契約など、金銭の一定額の支払いに関する公正証書には、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述（執行認諾文言）が記載されることがあります。この場合、その公正証書は債務名義となり、訴訟や調停などの裁判手続きを経ずに強制執行の申し立てが可能になります（執行証書）。

また、公証人は法律の専門家であるため、当事者の意思を慎重に確認し、適法な内容の公正証書を作成することが求められます。そのため、公正証書に記載された内容の信憑性は高く評価されます。

私署証書・私文書

公文書以外の文書を私文書といい、そのうち、作成者が署名または記名押印したものが私署証書です。

私署証書は、公正証書のように直ちに債務名義となることはありません。私署証書である契約書に基づいて相手方に金銭の支払いを強制したい場合は、その契約書を証拠として裁判所に訴えを起こし、支払いを命じる確定判決を得る必要があります。その後、債務名義を得て初めて強制執行の手続きに入ることができます。

民事訴訟においては、私文書は、作成者本人またはその代理人の署名または押印があるときは、真正に成立したものと推定されます（民事訴訟法228条4項）。判例上、文書に押された印影が本人（または代理人）の印章によるものであるときは、反証がない限り、本人の意思に基づいて押印されたものと推定されます。例えば、契約書に契約当事者の実印が押され、印鑑登録証明書が添付されている場合、その押印は本人の意思によるものと推定され、文書が真正に成立したものと推定されます（二段の推定）。

文書の記載内容の信憑性（実質的証拠力）は、文書が真正に成立したと認められた後に判断されますが、これについては裁判官の自由な心証に委ねられます。

処分証書と報告証書

証書は、その性質によって「処分証書」と「報告証書」にも区別されます。

処分証書

手形や遺言書のように、証明の対象である法律行為がその書面上で行われる文書を処分証書といいます。書面によらずにできる法律行為であっても、文書によって直接行われたものであれば、その文書は処分証書となります。売買契約書や契約解除の通知書などがその例です。

処分証書の場合、成立の真正が証明されれば、当然に実質的証拠力も認められ、書面上で行われた法律行為が直接証明されます。

報告証書

受取証書、診断書、商業帳簿など、人の見聞や意見などを記載した証書で、処分証書以外のものを報告証書といいます。

報告証書の成立の真正が証明されても、ただちに記載内容の正しさが証明されるわけではありません。

確定日付のある証書

確定日付のある証書は、第三者に対して、その作成日について完全な証拠力を有します（民法施行法4条）。公正証書の場合は、その日付が確定日付となります。私署証書は、登記所または公証人役場において日付のある印章を押すことで、確定日付を得ることができます。

関連項目

公証役場
行政書士
司法書士
卒業証書
修了証書
勲記・章記
証券
文書
文書偽造罪
文書等毀棄罪

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