詩城の旅びと

詩城の旅びと

松本清張が手がけた長編小説『詩城の旅びと』は、1988年から1989年にかけて『月刊ウィークス』に連載され、1989年9月に日本放送出版協会から刊行されました。この作品は南フランスのプロヴァンス地方を舞台に、画壇を巡る策謀や愛、復讐が交錯するサスペンス・ロマンとして描かれています。

あらすじ

物語は、あるOLの投書に端を発し、プロヴァンス国際駅伝の企画が進行するところから始まります。和栄新聞社の企画部長である木村信夫は、この企画の責任者として、南フランスへと向かいます。彼は、世界の陸上競技の利権を支配するバローナ会長と交渉し、この企画を有利に進めようと奮闘します。

しかし、この駅伝企画の裏には投書を行った多島通子の暗い意図が潜んでいました。視察や交渉を重ねる中で、木村は意外な人物や状況に遭遇します。特に、朝霧のカマルグでは不思議な人影が現れ、エクス＝アン＝プロヴァンスの広大な丘に立つ「星の館」は、既に不穏な雰囲気に包まれていました。

主な登場人物

• - 木村信夫

和栄新聞社の企画部長で、「プロヴァンス国際駅伝」の責任者。

• - 多島通子

プロヴァンスでの駅伝プランを提案したOLで、28歳。彼女の兄・明造は不遇の画家である。

• - ピエール・トリオレ

エクス＝アン＝プロヴァンスの大地主で、占星術や天体観測に興味を持つ。

• - マダム・タカコ

トリオレの妻で、日本出身の女性。

• - 小宮栄二

明造の友人だが、危険な手段で明造を画壇から追放した後、消息不明になる。

• - ホセ・マルティーヌ・バローナ

世界陸上運動連合本部の会長で、全権を掌握する独裁者。

テレビドラマ化

この作品は、1989年にNHKでテレビドラマとしても放映されました。全5回の連続ドラマで、原作とは異なる結末を迎えます。主なキャストには緒形拳や中川安奈が名を連ね、53日間にわたるフランス・ロケが実施されました。

関連項目

本作には、実際の地名や文化的背景が色濃く描かれています。特に、大分県竹田市に存在する大分一号橋が本作のモチーフとなっている他、マルセイユやサント＝マリー＝ド＝ラ＝メールなどの場所も重要な舞台として登場します。

このように『詩城の旅びと』は、サスペンスとロマンを融合させた深い作品であり、松本清張の文才が光る一作です。

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