カマルグ

カマルグ：自然と文化が息づく南フランスの三角州

カマルグは、フランス南部のアルルを起点に二手に分かれるローヌ川（大ローヌ川、小ローヌ川）と地中海に囲まれた広大な三角州地帯です。その植生は、東はクロー平野、西はエーグ＝モルト、北はボーケールまで広がると考えられています。中心に位置するヴァカレス湖を中心に、海岸沿いには複数の塩湖が点在しています。

多様な生態系と動植物

カマルグは、北部には農村地帯、南部には湿地帯が広がっています。特に南部の湿地帯は、アッケシソウ属の塩生植物やセイヨウシロヤナギとギンドロの拠水林など、珍しい生態系が形成されています。フラミンゴ、サギ科、カモ科、カモメ科など、356種もの鳥類が飛来する地としても知られています。また、地中海沿岸とフランスに残る唯一のヨーロッパヌマガメの大きな個体群も生息しています。

ラ・トゥール・ドゥ・ヴァラには、リュック・ホフマンが創始した〈地中海地域湿地保全研究センター〉があり、湿原に関する研究が行われています。

馬と牛の放牧

カマルグでは、牛や馬の放牧も行われています。特に、半野生化した「カマルグの白い馬」の美しさは広く知られており、アルベール・ラモリス監督の短編映画『白い馬』（1953年、カンヌ国際映画祭グランプリ受賞）の舞台にもなりました。フランス国内では放牧が減少しているため、ジャン・アンリ・ファーブルが研究したタマオシコガネの大型種は、カマルグなど限られた地域でしか見られなくなっています。

特産品

カマルグはフランス有数の稲作地帯であり、フランス全体の生産量の98％を占めています。また、土壌に塩分を多く含むことから製塩も盛んで、その天日塩は「ペルル・ド・セル（塩の真珠）」と呼ばれています。

自然保護への取り組み

カマルグの特殊な動植物相を保護するため、1927年には13,117ヘクタールが国立自然保護地域に、1970年には300ヘクタールが地方自然公園に指定されました。1986年12月には85,000ヘクタール、1997年には西側のプティト・カマルグの37,000ヘクタールがラムサール条約登録地となりました。さらに、1977年にはユネスコの「カマルグ生物圏保護区」にも指定されています。

カマルグに関連する都市

カマルグへの玄関口となる都市としては、アルル、ボーケール、タラスコン、ニーム、フルク、ベルガルド、エマルグ、ガラルグ＝ル＝モンチューなどが挙げられます。カマルグ内には、トランクタイユ（アルル市の一地区）、サント＝マリー＝ド＝ラ＝メール、サラン＝ド＝ジロー、ポール＝サン＝ルイ＝デュ＝ローヌなどの都市があります。

プティト・カマルグは、現在の三角州の西側に位置し、かつてのローヌ川の支流によって形成されました。エーグ＝モルト、ル・グロ＝デュ＝ロワ（ポール・カマルグ港を擁する）、サン＝ジル、ガリシアン、ル・カイヤール、ヴォヴェールなどの都市が含まれます。

文化：ガルディアン・ド・トロ

カマルグ地方の料理として有名なのが「ガルディアン・ド・トロ」です。カマルグ米を高く盛り付け、その周りを牛肉（特にスジ肉）の煮込みがソースと共に盛り付けられます。

参考文献

辻井達一『湿原力 神秘の大地とその未来』北海道新聞社、2013年。ISBN 978-4-89453-689-0。

外部リンク

Site du parc régional de Camargue
Réserve Nationale de Camargue
Réserve de biosphère de Camargue

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