誓願

誓願：仏教における救済への誓い

誓願とは、神仏への強い願いや、自らの意志を固く誓うことを意味します。仏教においては、特に大乗仏教で重要な概念であり、仏や菩薩が衆生救済のために立てた、必ず成就させると誓った強い決意を表します。この記事では、仏教における誓願、特に大乗仏教における誓願について詳しく解説します。

大乗仏教における誓願

大乗仏教では、仏や菩薩は全ての生き物を苦しみから救済するという大きな使命を負っています。この使命を果たすための強い意志と決意が、誓願として表現されます。菩薩は、衆生済度という願いを成就させるまで、自らは涅槃に入らないと誓います。この誓願は、菩薩の慈悲の深さと、救済への揺るぎない決意を示しています。阿弥陀如来の本願も、この誓願の一種と捉えることができます。

代表的な誓願として、全ての仏・菩薩に共通する四弘誓願があります。これは、菩薩が仏道を求める際に最初に立てる四つの誓願で、菩薩の普遍的な志向性を示しています。

四弘誓願：菩薩の普遍的な誓い

四弘誓願は、以下の四つの誓願から成り立っています。

1. 衆生無辺誓願度（しゅじょうむへんせいがんど）: あらゆる生き物を救済するという誓願です。衆生の苦しみは限りなく広大であるという認識に基づいています。
2. 煩悩無量誓願断（ぼんのうむりょうせいがんだん）: 煩悩は尽きることがないほど多いですが、全てを断つという誓いです。煩悩を克服し、悟りを開くという強い決意を表しています。一部宗派では「煩悩無尽誓願断」または「煩悩無量誓願断」と表記されます。
3. 法門無尽誓願智（ほうもんむじんせいがんち）: 仏法の教えは尽きることなく広大ですが、全てを理解するという誓いです。仏法を深く学び、悟りを求める姿勢を示しています。一部宗派では「法門無量誓願学」と表記されます。
4. 仏道無上誓願成（ぶつどうむじょうせいがんじょう）: 仏の道は最高ですが、必ず成仏するという誓いです。仏道修行の完成と、究極の悟りへの到達を誓っています。

これらの誓願は、多くの日本仏教宗派で在家信徒の日常読経としても用いられています。ただし、宗派によって微妙な語句の違いが存在することに注意が必要です。特に禅宗系（曹洞宗、臨済宗、黄檗宗）では、表現が異なる場合があります。

その他の誓願

四弘誓願以外にも、多くの誓願が存在します。例えば、薬師如来の十二願、阿弥陀如来の四十八願、釈迦如来の五百大願などがあります。これらの誓願は、それぞれの仏の具体的な救済活動を示しており、仏教の多様な教えを反映しています。

誓願と他の宗教

誓願は仏教だけでなく、他の宗教にも見られます。例えば、カトリック教会では、修道者となる際に神に清貧、貞潔、従順の三つの誓いを立てます。これは、仏教の誓願と同様に、神への献身と、信仰生活における強い意志の表明です。

まとめ

誓願は、仏教における重要な概念であり、仏や菩薩の慈悲と、救済への揺るぎない決意を表しています。四弘誓願をはじめとする様々な誓願は、仏教徒の信仰生活において、指針となるだけでなく、救済への道を示す羅針盤としての役割を果たしています。それぞれの誓願の背景や意味を理解することで、仏教の教えをより深く理解することができます。

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