誕生 (尾崎豊のアルバム)
尾崎豊の5作目のオリジナルアルバム『誕生』は、1990年11月15日にCBS・ソニーからリリースされました。前作『街路樹』から約2年ぶりの作品であり、尾崎自身が作詞・作曲だけでなくプロデュースも担当した初のセルフプロデュースアルバムです。
1988年の東京ドーム公演後、尾崎は所属事務所と決別。古巣であるCBS・ソニーへの移籍を希望し、かつてのプロデューサー須藤晃との再タッグを熱望しました。また、月刊カドカワ編集長の見城徹との出会いが、尾崎の再起を後押ししました。見城は尾崎を大特集し、小説連載の場を提供。移籍までの期間、尾崎は執筆活動に専念しました。1989年には第一子である裕哉が誕生し、父親としての喜びも経験しました。その後、須藤の尽力により「ロード&スカイ」に移籍、CBS・ソニーへの復帰を果たします。
本作では、尾崎自身の希望によりセルフプロデュースとなりました。初期作品のプロデューサーであった須藤晃はディレクターとして参加し、約5年ぶりの共同作業となりました。編曲は星勝と尾崎の共同名義。海外の著名なミュージシャン、エディ・マルティネス、ジェリー・マロッタ、ジェフ・ボヴァなどが参加し、音楽性の幅を広げました。レコーディングは東京で行われ、海外ミュージシャンはアメリカから招聘。エンジニアにはラリー・アレクサンダーを迎えました。尾崎はプロデューサーという立場に苦労しながらも、「究極的に面白かった」と述べています。しかし、レコーディング中は尾崎の猜疑心から険悪な雰囲気が漂い、スタジオで暴れたり、ミュージシャンと喧嘩したりすることも日常茶飯事だったようです。
本作は、尾崎にとって唯一の2枚組オリジナルアルバムです。結婚や子供を題材にしたプライベートな曲や、テロリストをテーマにした社会的な曲が収録されています。尾崎は、テクノロジーの進化によって人間性が失われていくことへの危機感を表明し、音楽業界の二極化を指摘しました。難解な歌詞については、リスナーに補足が必要だと考え、一部の曲を英語タイトルにしました。プロデューサーとしての尾崎は、自己表現だけでなく自己変革を目指していたと須藤は述べています。
DISC 1
「LOVE WAY」：先行シングル。尾崎の新たな音楽地図を示す曲。
「KISS」：サラリーマン生活を卑下する曲。ライブでも演奏された。
「黄昏ゆく街で」：リカットシングル。尾崎のもう一つの音楽性を伝えるラブソング。
「ロザーナ」：ウェストコーストロック風サウンド。伸びやかなボーカルが印象的。
「RED SHOES STORY」：尾崎のホームグラウンドであったロックバーをテーマにした曲。
「銃声の証明」：テロリストとして育てられた人間の悲劇を描いたフィクション。歌詞のモデルは金賢姫とされる。
「LONELY ROSE」：バラード。ライブでは演奏されなかった。
「置き去りの愛」：エディ・マルティネスのギターが印象的な曲。ライブ未演奏。
「COOKIE」：社会的なメッセージソング。ライブではファンにクッキーの意味を問いかけた。
「永遠の胸」：リカットシングル。
DISC 2
「FIRE」：ライブのオープニングを飾る曲。
「レガリテート」：ドイツ語で法律の意味。ライブ未演奏。
「虹」：シングル「永遠の胸」のカップリング曲。
「禁猟区」：自らのドラッグ体験をテーマにした曲。ライブでは一部のみ演奏。
「COLD JAIL NIGHT」：拘禁中に制作された曲。尾崎の兄に釈放当日に歌われた。
「音のない部屋」：シングル「黄昏ゆく街で」のカップリング曲。
「風の迷路」：ライブ未演奏。
「きっと忘れない」：ライブで披露されたが、CD化は後にされた。
「MARRIAGE」：ライブ未演奏。
「誕生」：アルバムのタイトル曲。ライブでは本編の最後に歌われた。
本作は、CD2枚組とカセットテープ2本組でリリースされました。アートディレクションは田島照久が担当。歌詞カードには尾崎自身が描いた絵画や撮影した写真が使用されています。シングルカットされた3曲は、それぞれ尾崎の音楽性を象徴するものでした。
アルバムリリース後、尾崎は個人事務所「アイソトープ」を設立し、コンサートツアー「Yutaka Ozaki Tour'91 "Birth"」を開催。全国48公演に加え、追加公演も行われました。尾崎はツアーに対し「路上に掲げた旗を見よ」というスローガンを掲げました。しかし、ツアー中に見城との関係がこじれ、小説『黄昏ゆく街で』は未完のまま終了しました。ツアーは成功裏に終わりましたが、尾崎の精神状態は不安定で、スタッフとの関係も悪化しました。
本作は、サウンド面と歌詞の両面で賛否両論の評価を受けました。外国人ミュージシャンの演奏は、緊張感に満ち溢れる一方で、工業製品のようなニュアンスの欠如を指摘されました。歌詞については、デビュー当時からの変化を指摘し、より内省的で抽象的になったという評価がありました。
本作はオリコンアルバムチャートで初登場1位を獲得。累計売上は48万枚を超え、プラチナ認定を受けました。尾崎の死後、過去作とともに再びランクインしました。
尾崎豊の音楽的変遷と内面を映し出す本作は、彼のキャリアにおいて重要な作品の一つです。
背景
1988年の東京ドーム公演後、尾崎は所属事務所と決別。古巣であるCBS・ソニーへの移籍を希望し、かつてのプロデューサー須藤晃との再タッグを熱望しました。また、月刊カドカワ編集長の見城徹との出会いが、尾崎の再起を後押ししました。見城は尾崎を大特集し、小説連載の場を提供。移籍までの期間、尾崎は執筆活動に専念しました。1989年には第一子である裕哉が誕生し、父親としての喜びも経験しました。その後、須藤の尽力により「ロード&スカイ」に移籍、CBS・ソニーへの復帰を果たします。
録音
本作では、尾崎自身の希望によりセルフプロデュースとなりました。初期作品のプロデューサーであった須藤晃はディレクターとして参加し、約5年ぶりの共同作業となりました。編曲は星勝と尾崎の共同名義。海外の著名なミュージシャン、エディ・マルティネス、ジェリー・マロッタ、ジェフ・ボヴァなどが参加し、音楽性の幅を広げました。レコーディングは東京で行われ、海外ミュージシャンはアメリカから招聘。エンジニアにはラリー・アレクサンダーを迎えました。尾崎はプロデューサーという立場に苦労しながらも、「究極的に面白かった」と述べています。しかし、レコーディング中は尾崎の猜疑心から険悪な雰囲気が漂い、スタジオで暴れたり、ミュージシャンと喧嘩したりすることも日常茶飯事だったようです。
音楽性とテーマ
本作は、尾崎にとって唯一の2枚組オリジナルアルバムです。結婚や子供を題材にしたプライベートな曲や、テロリストをテーマにした社会的な曲が収録されています。尾崎は、テクノロジーの進化によって人間性が失われていくことへの危機感を表明し、音楽業界の二極化を指摘しました。難解な歌詞については、リスナーに補足が必要だと考え、一部の曲を英語タイトルにしました。プロデューサーとしての尾崎は、自己表現だけでなく自己変革を目指していたと須藤は述べています。
楽曲
DISC 1
「LOVE WAY」：先行シングル。尾崎の新たな音楽地図を示す曲。
「KISS」：サラリーマン生活を卑下する曲。ライブでも演奏された。
「黄昏ゆく街で」：リカットシングル。尾崎のもう一つの音楽性を伝えるラブソング。
「ロザーナ」：ウェストコーストロック風サウンド。伸びやかなボーカルが印象的。
「RED SHOES STORY」：尾崎のホームグラウンドであったロックバーをテーマにした曲。
「銃声の証明」：テロリストとして育てられた人間の悲劇を描いたフィクション。歌詞のモデルは金賢姫とされる。
「LONELY ROSE」：バラード。ライブでは演奏されなかった。
「置き去りの愛」：エディ・マルティネスのギターが印象的な曲。ライブ未演奏。
「COOKIE」：社会的なメッセージソング。ライブではファンにクッキーの意味を問いかけた。
「永遠の胸」：リカットシングル。
DISC 2
「FIRE」：ライブのオープニングを飾る曲。
「レガリテート」：ドイツ語で法律の意味。ライブ未演奏。
「虹」：シングル「永遠の胸」のカップリング曲。
「禁猟区」：自らのドラッグ体験をテーマにした曲。ライブでは一部のみ演奏。
「COLD JAIL NIGHT」：拘禁中に制作された曲。尾崎の兄に釈放当日に歌われた。
「音のない部屋」：シングル「黄昏ゆく街で」のカップリング曲。
「風の迷路」：ライブ未演奏。
「きっと忘れない」：ライブで披露されたが、CD化は後にされた。
「MARRIAGE」：ライブ未演奏。
「誕生」：アルバムのタイトル曲。ライブでは本編の最後に歌われた。
リリースとアートワーク
本作は、CD2枚組とカセットテープ2本組でリリースされました。アートディレクションは田島照久が担当。歌詞カードには尾崎自身が描いた絵画や撮影した写真が使用されています。シングルカットされた3曲は、それぞれ尾崎の音楽性を象徴するものでした。
ツアー
アルバムリリース後、尾崎は個人事務所「アイソトープ」を設立し、コンサートツアー「Yutaka Ozaki Tour'91 "Birth"」を開催。全国48公演に加え、追加公演も行われました。尾崎はツアーに対し「路上に掲げた旗を見よ」というスローガンを掲げました。しかし、ツアー中に見城との関係がこじれ、小説『黄昏ゆく街で』は未完のまま終了しました。ツアーは成功裏に終わりましたが、尾崎の精神状態は不安定で、スタッフとの関係も悪化しました。
批評
本作は、サウンド面と歌詞の両面で賛否両論の評価を受けました。外国人ミュージシャンの演奏は、緊張感に満ち溢れる一方で、工業製品のようなニュアンスの欠如を指摘されました。歌詞については、デビュー当時からの変化を指摘し、より内省的で抽象的になったという評価がありました。
チャート成績
本作はオリコンアルバムチャートで初登場1位を獲得。累計売上は48万枚を超え、プラチナ認定を受けました。尾崎の死後、過去作とともに再びランクインしました。
尾崎豊の音楽的変遷と内面を映し出す本作は、彼のキャリアにおいて重要な作品の一つです。
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