語中音消失

語中音消失（Syncope）とは

語中音消失（ごちゅうおんしょうしつ、syncope）とは、単語の内部に存在する一つまたは複数の音が脱落する現象を指します。この用語は、ギリシャ語の「syn-」（共に）と「kopein」（打つ）という語源に由来します。言語学、特に歴史言語学の分野で、この現象は言語の変化を理解する上で重要な概念とされています。

歴史言語学における語中音消失

歴史言語学では、語中音消失は特に、単語内でアクセント（強勢）を持たない母音が脱落する現象を指すことが多いです。この現象は、言語が時間とともに変化する過程で、発音の効率化や簡略化が起こる一例として捉えられます。

例:

ラテン語 cálidum > イタリア語 caldo（熱い）
ラテン語 verecundia > イタリア語 vergogna（恥）
ラテン語 vetulus > イタリア語 vecchio（古い）

これらの例では、ラテン語の単語の中間にある母音がイタリア語では消失していることがわかります。

その他の脱落

語中音消失は、母音だけでなく、子音や他の音素が脱落する現象も含むことがあります。例えば、以下のような例が挙げられます。

古[[英語]] hláford > 英語 lord（領主）

この例では、古[[英語]]の中間にある子音が現代英語では脱落しています。

詩における語中音消失

詩の世界では、語中音消失は装飾や韻律の調整のために意図的に用いられることがあります。この場合、単語の音を削ることで、詩のリズムや響きをより魅力的にすることができます。

例:

イタリア語 spirito > 詩 spirto（勇気）
英語 hastening > 詩 hast'ning（急ぐ）
英語 heaven > 詩 heav'n（天国）
英語 over > 詩 o'er（〜の上に）

これらの例では、単語の内部の音がアポストロフィによって示され、詩的な表現に貢献しています。

口語における語中音消失

日常的な会話やくだけたスピーチでは、単語が短縮される現象がよく見られます。これも一種の語中音消失と捉えることができます。しかし、アポストロフィを用いて表記される「didn't」のような形式は、一般的に縮約とみなされます。

例:

英語 going to > gonna
英語 don't know > dunno

これらの例では、単語の一部が脱落し、より簡潔な表現になっています。

関連する言語現象

語中音消失は、他の言語現象と関連して現れることがあります。以下にいくつかの関連現象を示します。

語尾音消失: 単語の末尾の音が脱落する現象。
語頭音消失: 単語の先頭の音が脱落する現象。
エリジオン: 二つの語の連結において、語尾の母音や子音が脱落する現象。
母音弱化: アクセントのない母音がより曖昧な音に変化する現象。
子音弱化: 特定の環境下で子音がより弱く発音される現象。
音便: 発音を容易にするため、音が変化する現象。

まとめ

語中音消失は、言語が変化し進化する過程で自然に発生する現象であり、歴史言語学、詩、口語など、様々な分野で観察されます。単語の中間にある音が脱落することで、言語の効率性や表現の多様性が生まれます。この現象を理解することは、言語の変化や構造をより深く理解するための鍵となります。

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