誰もがそれを知っている

スペインの田舎町で起こる、家族の秘密と誘拐事件

2018年公開のスペイン映画『誰もがそれを知っている』（原題：Todos lo saben）は、イラン出身の巨匠アスガル・ファルハーディー監督による、ペネロペ・クルスとハビエル・バルデムという豪華キャストを擁するサイコスリラーです。

物語は、アルゼンチンに住むラウラが、娘イレーネと息子ディエゴを連れて、スペインの小さな村に帰省する場面から始まります。妹の結婚式に出席するため、故郷を訪れたラウラは、家族や幼なじみであるパコと再会し、喜びに浸ります。しかし、祝祭ムードは長くは続きません。結婚式後、娘のイレーネが誘拐されてしまうのです。

この誘拐事件をきっかけに、村に隠された秘密が次々と明らかになっていきます。ラウラの姉マリアナは、裕福な夫を持つラウラを内心では羨んでおり、ラウラの夫アレハンドロの破産を知り、狂言誘拐ではないかと疑念を抱きます。一方、ラウラはパコがイレーネの実の父親であることを告白します。これは村人にとって公然の秘密に近いものでしたが、ラウラの実家とパコ家の間には、長年続く確執がありました。ラウラの実家はかつてワイナリーを経営していましたが、没落し、パコ家にそれを売却した過去があります。

事件の捜査は、元警官ホルヘの協力を得て進められます。ホルヘは、犯人が素人であり、パコが所有するワイナリーを売却して身代金を用意しようとしたと推測します。身代金を用意するためにワイナリーを売却しようとするパコに対し、妻のベアは激しく反対します。イレーネがパコの娘だと知った衝撃と、ラウラによるワイナリー奪回計画への疑念が、ベアの抵抗を強めるのです。

しかし、真犯人はパコではありませんでした。誘拐犯は、マリアナの娘ロシオとその夫ガブリエルだったのです。罪悪感に苦しむロシオは、夫にイレーネを解放しようと訴えますが、ガブリエルは事態を急ぎ、パコに身代金を要求するメールを送信します。こうして、身代金を手に入れたガブリエルはイレーネを解放し、全てを失ったパコは妻のベアに見捨てられてしまいます。

事件後、マリアナはラウラ一家がアルゼンチンに帰国するまで何も語らず、深い沈黙を保ちます。しかし、ラウラたちが去った後、マリアナは夫のフェルナンドに、ロシオとガブリエルが犯人である事実を打ち明けます。

映画は、誘拐事件という衝撃的な出来事を軸に、家族の複雑な関係、過去の秘密、そして村社会の閉鎖性といった様々な要素を巧みに織り交ぜています。ペネロペ・クルスとハビエル・バルデムの圧巻の演技、そしてアスガル・ファルハーディー監督独特のサスペンス演出は、観客を最後まで魅了し続けます。一見、シンプルながらも奥深い人間ドラマが展開される本作は、観終わった後も長く心に残る、忘れ難い作品と言えるでしょう。

キャスト

ラウラ：ペネロペ・クルス
パコ：ハビエル・バルデム
アレハンドロ：リカルド・ダリン
ベア：バルバラ・レニー
アナ：インマ・クエスタ
マリアナ：エルビラ・ミンゲス
フェルナンド：エドゥアルド・フェルナンデス
アントニオ：ラモン・バレア
ロシオ：サラ・サラモ
イレーネ：カーラ・カンプラ
* ホルヘ：ホセ・アンヘル・エヒド

製作と公開

フランス、スペイン、イタリアの共同制作。2017年8月に主要撮影が開始され、2018年5月にはカンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映されました。その後、トロント国際映画祭でも上映され、スペイン、アメリカ合衆国など世界各国で公開されました。

評価

Rotten Tomatoesでは批評家支持率78％、Metacriticでは加重平均値68/100と、高い評価を得ています。豪華キャストと巧みな演出にもかかわらず、脚本にやや物足りなさを感じたという意見も見られますが、全体的には高く評価されている作品です。

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