誹謗

誹謗（ひぼう）についての歴史的考察

誹謗とは、古代中国において王や皇帝に対する批判の行為を指し、この行為は重罪とされました。このような行為をどう捉えるべきか、また、どのような基準で罰を科すかは、当時の政治状況によって各時代に異なる解釈が見られました。

伝説上の誹謗の木

伝説によると、堯帝は道の旁に誹謗の木を設置し、民衆が政治への不満を書き込むことで、その意見を聴取したとされています。このため、古代中国においては、正しい政治の実現のために諫言が重要視され、批判が許される場面もあったことがわかります。

秦の時代

誹謗が罪とされるようになった正確な時期は不明ですが、春秋時代には比較的自由に政治について批判できる風潮がありました。しかし、秦の末期には状況が変わり、誹謗は厳しく取り締まられるようになります。始皇帝の死後、権力を握った趙高は偽の勅書を作成し、始皇帝の子である扶蘇を自殺に追い込む。その中で、扶蘇は「あの亡き父を誹謗した」として責められました。さらに、二世皇帝は「忠告を受けることが誹謗」と見なしてしまい、正当な批判さえも厳罰に処されるようになります。その後、劉邦が秦を倒した際、厳しい政権の運営を「誹謗する者は家族をも滅ぼす」と形容し、また「法律は簡潔に」という方針を掲げました。

前漢の動き

前漢では、秦の法律を受け継ぎつつも、一時的に誹謗や妖言の罪が廃止されました。文帝は、法律に無知な庶民が官に意見を申し立てた際、誤解や誤用によって重い罪に問われるケースが多いことに気づいたのです。にもかかわらず、誹謗の罪によって犠牲になる人々は後を絶ちませんでした。例えば、厳延年は政治を批判したとして斬首される運命を辿ります。また、歴史書においても、多くの者が誹謗や妖言によって不道徳とされ、罰を受けたという記録が残されています。この「不道」という概念は、法律で明示されていないが、その悪質性ゆえに罰せられることが多かったと考えられています。即ち、誹謗罪が廃止された後も、誹謗の名の下に他の罪が適用され、刑罰を受け続けたのです。

哀帝の時代と今後の影響

哀帝の綏和2年には、誹謗詆欺法が再度廃止されました。これは文帝の廃止と重なりますが、その背景にある意図は今なお明確ではありません。通して見れば、前漢時代では皇帝に対する批判が重罪であるという認識と、建設的な批判を防ぐのは良くないとする意見がせめぎ合っており、時が経つにつれて、過去に比べて死罪から軽減される場合が増加したのです。

後の時代への継承

このように、誹謗をめぐる議論や法制度の変遷は、後の時代にも様々な影響を及ぼすこととなりました。言論の自由や政治的批判に対する認識は、時代によって変化していくことになりますが、それを受け継ぎ、発展させていくことが歴史を構築する要素となっていくのです。

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