調度

調度：時代と社会を映す日用品

「調度」とは、日常生活で用いられる道具、家具、日用品などを広く指す言葉です。現代ではあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、古くから人々の生活に密着した、重要な概念でした。しかし、その具体的な内容は時代や社会階層によって大きく異なっています。

平安時代の調度：宮廷文化の華

平安時代の貴族社会において、「調度」は寝殿装飾やそれに用いられる道具などを含む、広範な意味で用いられていました。「室礼」とほぼ同義語として使われ、宮廷文化の華やかさを象徴するものでした。平安時代以降の有職故実（朝廷の儀式や職掌に関する記録）では、主に公家が儀式や行事で使用する道具や家具が「調度」として扱われ、装束に関しては、場合によって含まれるかどうかが異なっていました。

『和名類聚抄』という辞書には「調度部」という項目があり、その幅広さが伺えます。仏塔の道具、伽藍の備品、僧坊の用具、祭祀に用いる道具、文書や絵画関係の道具、戦争に関する道具、弓矢、刑罰に用いる道具、乗馬関係の道具、鷹狩猟の道具、漁労・農業・建築・細工・鍛冶・音楽・衣服・計量・装飾・沐浴・料理・香道・裁縫・染色・織物・養蚕・屏風・寝具・旅行・葬儀などに用いる道具など、実に多岐にわたる品々が「調度」として分類されています。これは、平安時代の社会が、宗教、政治、軍事、経済など様々な要素が複雑に絡み合った社会であったことを反映していると言えるでしょう。

鎌倉時代以降の調度：武家の象徴

鎌倉時代の武家社会では、「調度」の意味合いは変化しました。弓矢とその関連道具を指すようになりました。この習慣は近世まで続き、江戸時代の武家の屋敷には、重籐製の弓2張と矢を入れた逆頬空穂（さかつらうつぼ）1腰を飾る調度台があり、儀式や特別な機会に飾られるのが習わしでした。これは武家の威厳と武力を象徴するものであったと言えるでしょう。

まとめ：時代と共に変化する「調度」

このように、「調度」という言葉は、時代や社会の状況によってその意味や範囲が大きく変化してきました。平安時代の宮廷文化の華やかさから、鎌倉・江戸時代の武家の象徴へと、その内容は多様であり、それぞれの時代の社会構造や文化を反映しています。 「調度」という言葉を理解することは、日本の歴史と文化を深く理解することに繋がります。現代の私たちにとって、普段何気なく使っている道具や家具なども、歴史の積み重ねの上に成り立っているという視点を持つことは、日々の生活をより豊かにするでしょう。 古文書や歴史資料を紐解き、「調度」がどのように扱われていたのかを探求していくことで、その時代の人々の暮らしや考え方がより鮮やかに浮かび上がってくるでしょう。 「調度」という一見小さな言葉の中に、大きな歴史と文化が凝縮されているのです。

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