諏訪忠恕

諏訪忠恕：信濃高島藩の改革者とその時代

諏訪忠恕は、信濃高島藩を治めた第8代藩主である。父は7代藩主の諏訪忠粛であり、側室の子として誕生した。文化10年（1813年）、従五位下伊勢守に叙任され、文化12年（1815年）には老中松平定信の娘を正室に迎えるなど、順調なスタートを切った。翌文化13年（1816年）、父の隠居に伴い家督を相続した。

忠恕の治世は、藩財政再建を目指す改革の時代であった。具体的な政策としては、まず徹底した検地を実施。土地の正確な把握による税収の安定化を目指した。さらに、藩にとって重要な水資源である諏訪湖の治水工事に着手し、水害からの防御を強化した。農業生産の向上にも力を入れ、文政7年（1824年）には桑の苗を下賜し、養蚕業の奨励を通して産業の発展を図った。これらの政策は一定の成果を収め、藩の経済基盤強化に貢献した。

しかし、順風満帆ではなかった。忠恕の治世中は、幾度となく凶作に見舞われた。また、江戸藩邸の焼失という不幸な出来事にも見舞われ、藩財政は悪化の一途を辿る。文政7年（1824年）には、高島藩で唯一とも言われる百姓一揆「山留強訴」が発生し、藩政運営の困難さを改めて突きつけられた。

こうした困難な状況の中、忠恕は危機管理にも力を注いだ。天保7年（1836年）、凶作に備えて藩内の余剰米を蓄える制度を導入。また、同年には隣国甲斐国で発生した天保騒動の鎮圧に幕府から要請を受け、出兵するなど、藩の存続に尽力した。

天保11年（1840年）、長男の忠誠に家督を譲り隠居。その後、嘉永4年（1851年）、江戸木挽町の藩邸で52歳で生涯を閉じた。

忠恕の生涯は、積極的な改革と厳しい現実との間で揺れ動いた時代を反映している。藩財政再建という困難な課題に果敢に挑戦し、様々な政策を展開した彼の治世は、高島藩の歴史において重要な位置を占めている。彼の功績は、後世に継承されるべき重要な遺産と言えるだろう。

系譜

父: 諏訪忠粛
母: 前島氏（山県氏とも）
正室: 清昌院（松平定信の娘）
側室: 富田氏
* 子女: 諏訪忠誠（長男）、諏訪頼図、諏訪頼叙、諏訪頼威、渡辺恒正室、牧子（稲葉正巳正室）、政子（米倉昌言正室）、諏訪倭子（本多助実正室）、下総国高岡藩主井上正和正室、諏訪揚子（神人部貞炳室）

忠恕の治世は、藩の存続をかけた改革と、数々の困難に立ち向かった時代であった。彼の功績と苦悩は、歴史の中に深く刻み込まれている。

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