諸公の時代

諸公の時代

諸公の時代（しょこうのじだい）は、ランゴバルド王国初期に発生した国王空位期（574/5年 - 584/5年）を指します。この時代は、王国の統一が失われ、各地の有力者が割拠する状態が続いたため、ランゴバルド王国の歴史において特異な時期として知られています。

概要

ランゴバルド王アルボイン、次いでクレフが相次いで暗殺された後、王国は30人以上の諸公が支配する連合政体へと変貌しました。歴史家パウルス・ディアコヌスは、この時代が10年間続いたと記録していますが、他の年代記では12年間とする記述も見られます。

パウルス・ディアコヌスは、諸侯の時代について、各公がそれぞれの都市を拠点として支配を確立したと説明しています。例えば、ティキヌムのザバン、ベルガムスのワラリ、ブレクシアのアリキス、トリデントゥムのエウィン、フォルム・ユリイのギスルフなどが挙げられます。この時代、多くのローマ貴族が殺害され、生き残った人々はランゴバルド人に財産を奪われました。教会は略奪され、聖職者は殺され、都市は荒廃し、ランゴバルド人によるイタリアの征服が拡大しました。

歴史

568年、アルボインに率いられたランゴバルド族がイタリア半島に侵入し、東ローマ帝国の勢力を脅かしました。しかし、アルボインとその後継者クレフは、短い治世の後に暗殺されました。クレフの死後、ランゴバルド人は新たな王を立てず、各地の公がそれぞれの領土を治める事実上の分裂状態となりました。フランク人の侵攻を受けた諸公は貢納を強いられ、この状態は7世紀前半まで続きました。

全体をまとめる指導者がいない中、諸公はフランク王国や東ローマ帝国と十分に渡り合うことができませんでした。584/5年にはランゴバルド人がフランク・ブルグント王国のプロヴァンスに侵攻しましたが、フランク王の反撃に遭いました。フランク王たちは北イタリアを荒らし、東ローマ帝国との連携を図りました。挟み撃ちにあうことを恐れた諸公は、クレフの息子アウタリを王に選出し、彼に首都パヴィーアと各公国の領土の半分を差し出しました。ここに諸公の時代は終わりを告げ、イタリアに残っていたフランク軍もアウタリから貢納金の支払いを受けて撤退しました。

諸公

諸公の時代の有力者として知られている人物は以下のとおりです。

ゾット（ベネヴェント公）
ヴァーラリ（ベルガモ公）
アライス1世（ブレシア公）
ギスルフ1世（フリウーリ公）
ザバン（パヴィーア公）
ファロアルド1世（スポレート公）
エウィン（トリデントゥム公）
アイモネ（トリノ公)

参考文献

橋本龍幸『中世成立期の地中海世界—メロヴィング時代のフランクとビザンツ』南窓社、1998年。ISBN 978-4816502002。
尚樹啓太郎『ビザンツ帝国史』東海大学出版会、1999年。ISBN 978-4486014317。
Everett, Nicholas. Literacy in Lombard Italy, c. 568–774. Cambridge: Cambridge University Press, 2003.
Oman, Charles. The Dark Ages, 476–918. London: Rivingtons, 1914.
* Paul the Deacon; Foulke, William Dudley, ed. Historia Langobardorum. Philadelphia: University of Pennsylvania, 1907.

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