諸磯貝塚

諸磯貝塚（もろいそかいづか）

諸磯貝塚は、神奈川県三浦市三崎町諸磯に所在する縄文時代の遺跡で、別名、諸磯遺跡とも呼ばれます。この遺跡は、縄文時代前期の土器型式である諸磯a,b,c式の標式遺跡として、考古学的に重要な位置を占めています。三崎海食台地から浜諸磯へ向かう道路の両側に広がり、標高約30メートルの台地上から北斜面にかけてが遺跡の範囲となっています。1967年（昭和42年）3月28日には、三浦市指定史跡（指定名称は「諸磯遺跡」）に指定されました。

発見と調査の歴史

諸磯貝塚の調査は、1897年（明治30年）に八木奘三郎によって初めて北側斜面で行われました。その後、1921年（大正10年）には榊原政職が調査を行い、出土した資料をもとに独自の土器論を展開し、「諸磯式土器」を提唱したことで、その名が広く知られるようになりました。

貝塚は、諸磯丘陵と新堀丘陵に挟まれた低地に位置しており、榊原による発掘地点では、貝層はそれほど顕著ではなかったと考えられています。しかし、前期の諸磯式土器をはじめ、石鏃、磨製石斧、石皿、骨角器などが出土しており、当時の人々の生活を知る手がかりとなっています。

榊原は、諸磯式土器を当時の縄文土器の分類でいうところの「厚手式土器」（現在の縄文中期の土器）や「薄手式土器」（現在の縄文後期の土器）よりも古いものと位置づけました。しかし、甲野勇らは逆に新しいものと見るなど、その編年をめぐって論争がありました。

1937年（昭和12年）には、赤星直忠と酒詰仲男が小貝塚を調査し、貝層の下から黒浜式期の竪穴建物跡1軒を検出しました。1957年（昭和32年）には、詳細な分布調査が行われ、台地上に複数軒の竪穴建物跡が埋もれていることが確認されました。出土した土器は、黒浜式、諸磯a,b,c式の時期のものに加え、茨城県方面の浮島式、関西方面の北白川下層Ⅲ式の土器も伴っていました。

貝層からは、サザエ、アワビ、カキを主体とし、イシダタミ、スガイなども見つかっています。魚については、マダイ、クロダイ、スズキの骨が確認されており、当時の食生活を垣間見ることができます。1979年（昭和54年）の調査では、竪穴建物跡がさらに5軒確認されています。

諸磯貝塚は、縄文時代前期の文化や生活様式を研究する上で、非常に重要な遺跡の一つと言えるでしょう。

参考文献

神奈川県立歴史博物館 2008『神奈川県貝塚地名表』

関連項目

縄文時代の遺跡一覧
* 神奈川県の貝塚の一覧

もう一度検索