諸象戯図式

諸象戯図式：江戸時代の多様な将棋の世界

『諸象戯図式』（しょしょうぎずしき）は、1694年（元禄7年）に出版された、日本における将棋に関する歴史的な解説書です。国立公文書館内閣文庫には、元禄9年刊行の再版本（西沢貞陣著とされる4巻本）が所蔵されており、貴重な資料として現在も研究されています。

収録内容：多様な将棋の解説と詰将棋

この書物には、大小様々な種類の将棋に関する解説が収録されています。1巻目は各種将棋の概要が記され、2巻目以降は詰将棋の問題集となっています。詰将棋は、伊藤宗看作による中将棋と、作者不詳の現代将棋の問題が収められています。

解説されている将棋の種類

『諸象戯図式』では、以下の将棋の種類が図解付きで解説されています。それぞれの将棋の初期配置図と駒の動き方が説明されていますが、ルールに関する記述は詳細を欠く部分もあります。

小象戯（小将棋）：現代将棋の原型と言える将棋。現代将棋の駒数40枚に対し、本書では42枚と記されています。その違いについて、天文年間に後奈良天皇が日野晴光と伊勢貞孝に命じて酔象（駒の一種）を廃止したと説明しています。
和象戯（和将棋）：日本の伝統的な将棋の一種。
中象戯（中将棋）：駒の種類が多く、複雑なルールを持つ将棋。
太象戯（大将棋）：大将棋の一種。
天竺大将棊（天竺大将棋）：インド由来とされる将棋。目次では「天竺象戯」と表記されています。
太太象戯（大大将棋）：非常に多くの駒を使用する、複雑な将棋。目次では「摩太象戯」と表記されています。
* 大象戯（泰将棋）：本書では「太象戯」と表記され、「大象棋」と混同されがちでしたが、後世の『象棋六種之図式』で「泰象棋」と改められています。

将棋史における意義

『諸象戯図式』は、江戸時代の将棋文化を理解する上で非常に重要な資料です。様々な種類の将棋が紹介されており、当時の将棋の多様性と、現代将棋へと至る歴史的変遷を垣間見ることができます。特に、小象棋の駒数に関する記述や、「太象戯」と「大象戯」の記述の違いなどは、将棋の歴史研究において重要な示唆を与えてくれます。

また、本書に収録されている詰将棋の問題は、当時の詰将棋のレベルを知る上で貴重な資料となっています。これらの詰将棋を通して、当時の将棋愛好家の技量や、将棋の戦略・戦術に関する知見を窺い知ることができます。

まとめ

『諸象戯図式』は、江戸時代の将棋文化を伝える貴重な文献であり、現代将棋を含む多様な将棋の種類、そして当時の詰将棋のレベルを知る上で、非常に重要な資料と言えます。将棋の歴史や文化に興味を持つ者にとって必見の書物と言えるでしょう。

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