今泉忠義

今泉忠義（いまいずみ ただよし）は、1900年7月17日に愛知県で生まれ、1976年11月5日に亡くなった、日本の著名な国語学者です。國學院大學の名誉教授、立教大学文学部教授を歴任し、日本の国語学研究に大きな足跡を残しました。

学問的業績

今泉忠義は、三矢重松、そして特に折口信夫に師事し、折口の五博士の一人として知られています。彼の研究は多岐にわたり、特に「日葡辞書」の研究と「源氏物語」の現代語訳・語法研究において、卓越した成果を上げました。主な著書には、『国語発達史大要』、『国語学史概説』、『現代語の性格』、『日葡辞書の研究』、そして『源氏物語全現代語訳』などがあります。これらの著作は、国語学の発展に大きく貢献し、現代の国語研究者にとっても重要な文献となっています。

略歴

愛知県南設楽郡西郷村（現在の新城市）で生まれた今泉は、愛知県立第二中学校（現在の愛知県立岡崎高等学校）を卒業後、國學院大學に進学しました。1923年に同大学の国文科を卒業後、皇典講究所神職養成部講師を経て、1928年に國學院大學教授に就任しました。さらに1929年には立教大学文学部教授も兼任し、教育者としてもその才能を発揮しました。
1948年には、学位論文「現代語法の特質とその歴史性」で文学博士の学位を取得し、1971年には國學院大學名誉教授の称号を受けました。

人物像と教育者としての側面

今泉忠義は、愛称「今忠（いまちゅう）」として親しまれ、愛妻家としても知られていました。また、教育者としては非常に厳格であり、その授業は学生たちに大きな影響を与えました。正則中学校の国語教師時代には、教え子である三谷栄一を國學院大學へ導くなど、後進の育成にも尽力しました。

特に有名なのは、國學院大學での「源氏物語」の講義です。授業は厳しく、遅刻は一切許されず、教室のドアが閉められ鍵がかけられるという徹底ぶりでした。試験も非常に難解で、高等学校レベルの基礎的な文法問題ができないと単位を取得することが難しいほどでした。しかし、この厳しさの背景には、学生たちへの深い愛情と、日本語文法の基礎をしっかりと身につけてほしいという強い願いがありました。学生たちは、後々になって今泉の厳しさに感謝し、誇りを持って語り継いでいます。

今泉は「大馬鹿野郎」という言葉をよく用いましたが、これは学生たちに「口惜しかったら、もっと勉強しろ」という刺激を与えるためのものでした。彼の教育は、単なる知識の伝達だけでなく、学生たちの成長を促すためのものでした。

死去

1976年、今泉忠義はハワイに向けて飛行中のノースウエスト機内で心臓麻痺により急逝しました。司法解剖の結果、死因が心臓麻痺であることが確認され、遺体はホノルルで荼毘に付された後、日本に帰国しました。

著書

今泉忠義は、数多くの著書を出版しています。代表的なものとして、『国語発達史大要』、『現代語の性格』、『日葡辞書の研究』シリーズ、そして『源氏物語全現代語訳』があります。これらの著作は、国語学の研究に不可欠な文献として、今日でも多くの研究者に参照されています。

記念論集

今泉忠義の業績を称え、彼の古希を記念した論集も出版されており、彼の学問的な影響力の大きさを物語っています。

今泉忠義は、その生涯を通じて日本の国語学の発展に大きく貢献しただけでなく、多くの学生たちに深い影響を与えた教育者としても、その名を歴史に刻んでいます。

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