謝冰心

謝冰心について

謝冰心（しゃ ひょうしん、1900年10月5日 - 1999年2月28日）は、20世紀の中国の著名な作家であり、文学の発展に大きな影響を与えた人物です。彼女は本名を謝婉瑩（しゃ えんえい）といい、ペンネームの「冰心」は唐の詩人王昌齢の詩に由来しています。

彼女は、小説、詩、散文、児童文学など幅広いジャンルで作品を創作し、その平易で美しい文体は多くの読者に感銘を与えています。特に日本においては、戦前からその作品が翻訳され、多くの人々に親しまれています。

生涯の歩み

謝冰心の家族は清の時代に富裕であり、父は軍人として働いていました。彼女は福州府で生を受け、幼少期には上海や煙台、さらには北京と転々と生活しました。父の影響を受け、家族はキリスト教徒であり、彼女は北京にあるキリスト教系の女子大学で学び、文学革命の影響を受け始めます。

1918年には大学に入学し、在学中に文筆活動を開始します。1919年には小説『両箇家庭』を発表し、初めて「冰心」というペンネームを使用しました。彼女は1921年に文学研究会に参加し、『小説月報』に作品を発表することで、文壇に顔を出すことになります。

1920年代には詩集『繁星』『春水』が大ヒットし、特にこれらの作品は多くの模倣作を生むほどの影響力を持ちました。1923年には燕京大学を卒業し、アメリカのウェルズリー大学に留学。最終的に、米国での経験をもとに『寄小読者』を出版しました。

帰国後は教育者として活動し、いくつかの大学で教鞭をとります。彼女の人生には、作家としてだけでなく、家庭や社会運動への関与が色濃く反映されています。1931年には子供を持つ母としての視点を強く反映した作品『分』を発表し、高く評価されました。

社会運動と戦争の影響

日中戦争が勃発すると、謝冰心は家族と共に奥地を転々とし、多くの作品を執筆しました。この時期の著作には、女性に関するテーマが多く取り上げられ、戦争の悲劇とその影響が色濃く描かれています。彼女の作品は、時代の変化と共に社会問題を鋭く反映していました。

戦後、彼女は日本に滞在し、東京大学での非常勤講師としての経験を得ました。その中で日本文化への理解を深め、《桜花賛》などの作品を発表しました。彼女の国際的な視点は、作品のなかでも際立っています。

文化大革命とその後

謝冰心の人生には多くの困難が伴い、特に文化大革命では政治的な圧力を受け、批判の対象となりました。しかし彼女はその後も創作を続け、家族への手紙を含む文書を残しました。彼女の作品は、家庭や社会に対する思索が込められています。

1995年には『冰心全集』全8巻が出版され、その後も新しい発見が続いています。彼女の文学は、単なる創作に留まらず、中国の歴史や社会へ深い影響を及ぼし、多くの読者を魅了し続けています。謝冰心の名は、今なお中国文学の象徴として語り継がれています。

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