謝沢

謝沢（しゃ たく）

謝沢は、明代に活躍した官僚であり、武人でもありました。生年は不明ですが、1449年にその生涯を閉じています。彼の本貫は紹興府上虞県です。

生涯

1418年（永楽16年）、謝沢は進士試験に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。はじめは南京刑部主事として勤務し、その後、広西参政へと異動しました。彼は各地でその能力を発揮し、着実に昇進を重ねていきました。

1449年（正統14年）には、通政使という重要な役職に抜擢され、白羊口の守備を任されることになります。この頃、明の皇帝が自ら率いた親征軍が土木堡の戦いでオイラトのエセン・ハーンに大敗を喫しており、明王朝は深刻な危機に直面していました。北方の守備を担う多くの者が戦いを恐れて逃亡する中、謝沢は息子である謝儼に別れを告げ、自らの使命を果たすべく白羊口へと赴任しました。この行動からも、彼の責任感と覚悟の強さが窺えます。

しかし、その数日後、エセン・ハーン率いるオイラト軍が白羊口に大挙して侵入してきます。本来、白羊口を守備するはずだった将軍の呂鐸は、敵の侵攻を前にして逃亡してしまいます。この緊急事態に際し、謝沢は自ら兵を率いて、山口を封鎖し、敵の侵入を食い止めようとしました。しかし、戦場では、大風が砂を巻き上げ、視界を遮るほどの悪天候に見舞われてしまいます。この状況を鑑み、他の関に移って敵を避けることを勧める者もいましたが、謝沢はそれを拒否し、あくまでもこの場所で戦うことを決意します。

オイラト軍が迫りくる中、謝沢率いる部隊は勇敢に戦いましたが、多勢に無勢であり、最終的に壊滅。謝沢は敵の手に掛かり、殉職してしまいます。彼の死は、朝廷に報告され、その功績を称え、息子である謝儼は大理寺評事として取り立てられました。謝沢の死は、当時の明王朝において、忠義を尽くした人物の象徴として、人々の記憶に深く刻まれました。

謝沢は、困難な状況下でも、自らの責任を全うしようとした武人であり、その勇気と忠誠心は後世に語り継がれています。

参考文献

* 『明史』巻167 列伝第55

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