警察庁広域重要指定118号事件

警察庁広域重要指定118号事件：悲劇的な結末を迎えた連続誘拐殺人事件

1991年に発覚した警察庁広域重要指定118号事件、別名「千葉・福島・岩手誘拐殺人事件」は、複数の県にまたがり、誘拐、監禁、そして強盗殺人が繰り返された極めて凶悪な事件です。この事件では、最終的に8人が逮捕され、そのうち3人が死刑判決を受けましたが、死刑が執行されることなく、3人全員が病死するという異例の結末を迎えました。

事件の概要

この事件は、大きく分けて3つの事件で構成されています。

第一の事件：岩手県での金融業者殺害事件

1986年7月、元警察官O、塗装工S、土建業者K、Kの弟W、土木作業員Xの5人は共謀し、岩手県盛岡市の金融業者Aから現金を強奪し、岩手県雫石町の山林に生き埋めにして殺害しました。この事件は、犯人グループの残忍性と冷酷さを如実に示すものでした。

第二の事件：福島県での塗装会社社長殺害事件

1989年7月20日、O、S、K、W、Xに加えて、元自動車運転手Y、塗装工Zが共謀し、福島県郡山市の塗装会社社長Bを取引を装って呼び出し、1700万円を強奪して殺害。その後、遺体を福島県猪苗代町の山林に埋めました。この事件でも、金銭目的のためには手段を選ばない犯人グループの異常性が際立ちました。

第三の事件：千葉県での塗装業者誘拐事件

1991年5月1日、S、Z、そして別の塗装工の男性が共謀し、千葉県市原市の塗装業者Cを誘拐、身代金2000万円を強奪しました。Cは殺害されずに2日後に解放されましたが、この事件をきっかけに、一連の事件の全貌が明らかになりました。逮捕された犯人の中には、元岩手県警察巡査のOが含まれており、主犯格であったことが判明しました。

裁判の経過

裁判では、金銭目的で無抵抗の被害者を生き埋めにするという残忍な犯行、そして2名が殺害された結果の重大性から、当初から死刑の適用が予想されていました。しかし、被告人らは公判で「自分は主犯ではない」と主張し、弁護側は死刑制度の問題点を指摘して死刑回避を訴えました。

福島地方検察庁は、O、S、K、W、Xの5被告人に死刑を、Y被告人に無期懲役を求刑しました。Z被告人は公判中に死亡したため、公訴[[棄却]]となりました。

1995年1月27日、福島地方裁判所は、O、S、Kの3被告人に対し、「主導的または重要な役割を果たした」として死刑判決を言い渡しました。WとXの2被告人に対しては「2人を殺害したが従属的な立場であった」として無期懲役判決を、Y被告人に対しては「殺害人数は1人だが従属的な立場」として無期懲役判決を言い渡しました。3人に同時に死刑判決が下されたのは、1965年以来のことでした。

被告人らは減刑を求めて控訴しましたが、仙台高等裁判所は一審と同様の判決を支持し、各控訴を棄却しました。最高裁判所も2004年6月25日、O、S、Kの3被告人の上告を棄却し、死刑判決が確定しました。

死刑確定後の状況

死刑囚Sは再審請求を行いましたが、最高裁で棄却されました。その後、2013年8月14日に病死しました。

死刑囚Kも再審請求を行いましたが、叶わず、2011年1月29日に病死しました。

死刑囚Oも再審請求を行いましたが、2014年6月26日に病死しました。

これにより、本事件の死刑確定囚3人は、誰一人として死刑が執行されることなく、病死するという異例の結末となりました。

まとめ

警察庁広域重要指定118号事件は、金銭目的のために人間の尊厳を奪い、命を奪うという極めて残忍な犯罪でした。犯人たちは法によって裁かれたものの、死刑執行前に病死するという異例の結末を迎え、社会に深い衝撃を与えました。この事件は、犯罪の残虐性とともに、司法制度における死刑の執行という重いテーマを私たちに問いかけるものとなっています。

参考資料

鎌田正文 著、事件・犯罪研究会, 村野薫 編『明治・大正・昭和・平成 事件・犯罪大事典』東京法経学院出版、2002年
最高裁判所第二小法廷判決 2004年（平成16年）6月25日
* 各種刑事裁判の判決文

もう一度検索