警察VS警察官

『警察vs警察官』は、原田宏二氏によって2006年に講談社から刊行された作品です。前著『警察内部告発者』で明らかにした警察内部の裏金問題や、組織における極端な上意下達体質を、具体的な事例を挙げてさらに深く掘り下げています。

本書では、警察組織と摩擦を起こした3人の警察官が登場します。一人目は、現職の警察官でありながら実名告発を行った仙波敏郎氏。警察内部の不正を告発した勇気ある人物です。二人目は、拳銃摘発のために組織ぐるみの違法捜査に加担してしまった長崎県警の元警部。上司に経緯を報告していたにも関わらず、彼だけが懲戒免職という重い処分を受けました。そして三人目は、年長の部下である巡査部長に紹介された店で数回割引を受けただけで、収賄の濡れ衣を着せられ依願退職に追い込まれた高知県警の警部です。

原田氏は、これらの3人への綿密な取材を基に、自らの警察官としての経験と照らし合わせながら、彼らを圧迫していった警察組織の構造に鋭く切り込んでいきます。警察組織が、時に個人の正義や良心を無視し、組織の論理を優先する様子が浮き彫りになります。仙波氏の実名告発は、警察内部に波紋を広げ、組織の隠蔽体質を白日の下に晒しました。また、違法捜査に加担させられた元警部の事例は、組織の命令に従わざるを得ない警察官の苦悩を描き出しています。さらに、些細なことがきっかけで収賄の濡れ衣を着せられた警部の事例は、警察組織における権力構造の歪みを象徴しています。

本書は、警察組織の内部に潜む問題点を告発するとともに、組織の中で生きる個人の葛藤や苦悩を描き出した作品と言えるでしょう。警察組織の閉鎖性や権力構造の問題点を明らかにし、社会に警鐘を鳴らしています。警察組織に関心のある方だけでなく、組織と個人の関係について考えたい方にとっても、非常に示唆に富む内容となっています。

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